日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第1号(26-30) 2008年

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著者

三宅 俊治,篠原 徹,池岡 恵,竹村 司

所属

近畿大学医学部小児科

要旨

背景:小児期僧帽弁逸脱症(mitral valve prolapse:MVP)の追跡の報告は少ない.小児期臨床像および 5 年以上の追跡例の中期予後を検討した.
方法:0.2~18.8歳(平均10.3歳)のMVP 168例を対象とした.5 年以上の追跡例は85例で,追跡期間は平均10.4年であった.心エコーで左室拡張末期径が120% of normal以上を中等症と判定した.
結果:逸脱部位は,前尖166例,後尖 1 例,前尖 + 後尖 1 例であった.5 年以上の追跡例では,初診時に収縮期逆流性雑音(systolic regurgitant murmur:SRM)を有さない34例中 2 例(6%)で追跡中にSRMを生じた.初診時にSRM を有する軽症僧帽弁逆流(mitral regurgitation:MR)46例中17例(37%)でSRMが消失し,2 例(4%)が中等症に増悪した.1 例は後尖逸脱例であり,他の 1 例は経過中に後尖逸脱が加わった前尖逸脱例であるが,ともに20歳台で無投薬である.初回の心エコー時にMR が中等症であった 5 例は,いずれも追跡中に心雑音が消失し,13~20歳までに再増悪例はない.重症MR に対する外科手術は,4 例(2%)において,1 歳 3 カ月~19歳(平均10.8歳)で施行された.そのうち 2 例は,当初無投薬で追跡されていた例であった.
結論:1)SRMを有する小児期MVPの大多数は,進行を認めず,43%が軽症化した.2)後尖逸脱例では,中等症への増悪例があり,注意深い観察が必要と考えられる.3)手術が施行された重症例でも,軽症~中等症と推測される時期があり,軽症~中等症であっても重症化する可能性もある.

平成18年10月31日受付
平成19年11月5日受理

キーワード

mitral valve prolapse,echocardiography,child,adolescent

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近畿大学医学部小児科 三宅 俊治