日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第2号(109-115) 2008年

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著者

清水 渉

所属

国立循環器病センター心臓血管内科

要旨

先天性QT延長症候群(long QT syndrome:LQTS)は,心電図上のQT時間の延長とTorsade de Pointes(TdP)と称される多形性心室頻拍を認め,失神や突然死の原因となる疾患であり,現在までに10個の遺伝子型が同定されている.遺伝子診断される患者のなかにおける各遺伝子型の頻度は,LQT1が40%,LQT2が30~40%,LQT3が10%であり,LQT1,LQT2,LQT3の 3 つの遺伝子型で90%以上を占める.このため,頻度の多いLQT1,LQT2,LQT3患者では,遺伝子型と表現型(臨床的特徴)の関連が詳細に検討され,遺伝子型特異的な心電図異常(T波形態),心事故の誘因,自然経過,予後,重症度の違いなどが明らかとなり,遺伝子型に基づいた患者の生活指導や特異的治療がすでに実践されている.さらにLQT1とLQT2については,原因遺伝子であるKCNQ1,KCNH2上の変異部位の違いによる重症度の違いも報告されており,遺伝子変異部位別の患者管理や治療の可能性も示唆されている.

平成19年1月5日受付
平成20年2月6日受理

キーワード

long QT syndrome,genotype,ion channel,mutation

別冊請求先

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国立循環器病センター心臓血管内科 清水 渉