日本小児循環器学会雑誌 第24巻 第2号(155-162) 2008年
著者
坂井 美穂1),松本 康俊2),長谷川 久弥1),鈴木 一広2),永瀬 裕三3),岡 徳彦3)
所属
松戸市立病院新生児科1),小児科2),心臓血管外科3)
要旨
肺動脈弁欠損症は肺動脈弁の低形成と肺動脈の拡張を特徴とする疾患であり,末梢肺動脈の発育や気道系の圧迫などが問題となる.今回われわれは異なる臨床経過をとり,気道評価を行ったファロー四徴症兼肺動脈弁欠損症(TOF⁄APV)の3例を経験したので報告する.症例1は日齢1女児.心雑音とチアノーゼを主訴に入院し,TOF⁄APVと診断した.入院時は多呼吸を認めるだけであったが徐々に呼吸状態が悪化し,気管支ファイバースコピーにて気管・気管支全体の狭小化と扁平化および喀痰分泌増加を認め,気道の3D構築CTにて,気管・気管支全体が細い所見であった.呼吸状態の悪化と体重増加を望めないため,日齢34に肺動脈縫縮術と心内修復術を施行するも死亡した.症例2は日齢0男児.妊娠32週ごろより胎児エコーにてファロー四徴症を指摘されていた.精査目的に入院しTOF⁄APVと診断した.呼吸困難はなく体重増加も良好にて日齢82で退院し,1歳時に心内修復術を施行した.気管支ファイバースコピーでは左主気管支入口部の変形は認めるも,気道は保たれており,大きな異常は認めなかった.術後経過良好に退院した.症例3は9カ月男児.他院にてフォローされていたが,手術目的に当院紹介となる.心臓カテーテル検査時の気管支ファイバースコピーにて気管・右気管支軟化症を認めた.心内修復術と同時に気管・右気管支外ステント術を施行し,術後経過良好に退院した.
平成19年2月15日受付
平成20年1月30日受理
キーワード
absent pulmonary valve,tetralogy of Fallot,tracheobronchial abnormality
別冊請求先
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松戸市立病院新生児科 坂井 美穂