日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第4号(516-521) 2008年

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著者

打田 俊司,原田 順和

所属

長野県立こども病院心臓血管外科

要旨

背景:開心術後抗生剤投与終了は成書にも明確な基準の記載はなく,概念的な基準であった.われわれもドレーン抜去までやCRP完全陰性化など概念的な基準で抗生剤投与終了としていた.今回,予防的抗菌薬の適正使用と新しい概念の術後創部管理法を導入し,術後管理法の変更とそれに伴う入院期間短縮化を試みた.
方法:対象は心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)・心室中隔欠損症(ventricular septal defect:VSD)・不完全型房室中隔欠損症(partial atrioventricular septal defect:pAVSD)の62症例.ドレーン抜去までやCRP陰性化などの基準で抗生剤終了を決めていた従来の管理(2003年 1 月~2004年 3 月)の30例をA群,術後抗菌薬投与縮小を行った現在の方法(2005年 1 月~12月)の32例をB群とし検討した.当院院内のグラム陽性菌抗菌薬耐性率(ローカルデータ)から使用抗生剤をセファゾリンナトリウムとし,今回の研究では術後 2 日目までの使用とした.術野で創部をハイドロコロイドドレッシング材で覆い

平成19年6月26日受理

キーワード

術後 4 日目に開放.術後の胸部X線撮影回数,血液検査回数,炎症所見(白血球数・CRP)の推移を比較検討した.
結果:術後入院期間はA群:9.0±2.7日からB群:5.7±1.1日(p < 0.01),抗生剤投与期間5.8±1.5日から2.0±0.0日(p < 0.01)へそれぞれ有意に短縮し,血液生化学検査回数は4.9±2.4回から2.1±0.4回 (p < 0.01),胸部X線撮影回数は5.0±2.1回から3.4±0.5回(p < 0.01)と有意に減少した.術後創部管理の変更による手術部位感染(surgical site infection:SSI)のアウトブレイクはなく,連日の消毒処置に伴う物品コストの有意な減少,医療廃棄物の軽減にも効果があった. 結論:予防的抗菌薬の適正使用を導入するに当たり,本研究では細菌ローカルデータの把握とデータ分析に基づき使用縮小化を推し進めた.同時に創部管理を含め入院期間短縮を意識した術後管理への変更は経済的にも効率が得られる可能性が高い.

別冊請求先

2008-02-25