日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第5号(598-605) 2008年

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著者

金 成海1),北村 則子1),増本 健一1),早田 航1),古田 千左子1),満下 紀恵1),新居 正基1),田中 靖彦1),小野 安生1),坂本 喜三郎2)

所属

静岡県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)

要旨

背景:大動脈縮窄・大動脈弓離断複合では,左室流出路狭窄を合併する頻度が高く,手術成績・予後に影響する.
目的:術前診断から術後遠隔期の経過を検討し,一期的根治術が適用可能となる左室流出路狭窄の基準の妥当性を検討すること.
対象:心室中隔欠損を伴う大動脈縮窄・大動脈弓離断複合連続38例.
方法:心エコーにより左室流出路(LVOT)の収縮期最小径を計測し,正常大動脈弁輪径との比(%LVOT)とz値を算出.術後にはLVOTのpeak velocity(Vp)を測定し,術前,術後約 1 年,術後 3 年と経時的に比較した
結果:術前の%LVOT 38~95(平均69.0),z値-10.3~+0.1(平均 -4.0).傍膜様部心室中隔欠損例(24例,63.2%)は%LVOT ≥ 48,z値 ≥ -7.8,肺動脈弁下欠損例(14例,36.8%)は%LVOT ≥ 55,z値 ≥ -6.5を基準として,36例に一期的根治術が施行された.約 1 年後には%LVOT,z値ともに有意な成長を認め,術後 3 年でも成長を維持していた.3 年以降,5 例でVp ≥ 2.2m/secとなったが,幼児期での再介入例はない.
結語:サイズ的には%LVOT ≥ 48,z値 ≥ -7.8で予後良好な一期的根治が期待できる.肺動脈弁下欠損例では欠損孔閉鎖パッチが肺動脈弁にかかり乳幼児期に左室流出路狭窄を来した場合のRoss手術による対応ができないため,より余裕をもった基準(%LVOT ≥ 55,z値 ≥ -6.5)が必要と考える.

平成19年9月27日受付
平成20年4月28日受理

キーワード

left ventricular outflow tract,coarctation of aorta,interruption of aortic arch,aortic stenosis,subaortic stenosis

別冊請求先

:〒420-8660 静岡市葵区漆山860
静岡県立こども病院循環器科 金 成海