日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第5号(589-597) 2008年

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著者

関根 道和,山上 孝司,鏡森 定信

所属

富山大学大学院医学薬学研究部保健医学講座

要旨

循環器疾患発生予防のためには小児期からの肥満対策が必要であるとされる.そこで,平成元年度(1989年度)生まれの富山県在住の児童約 1 万人を対象とした出生コホート研究(富山スタディ)から,(1) 肥満に関連する生活習慣,(2) 生活習慣の社会背景,(3) 生活習慣の継続性について,レビューを行った.富山スタディでは,対象児童が 3 歳児健診の時に初回調査を実施し,以後 3 年ごとに追跡調査を実施している.その結果,横断的および縦断的に肥満に関連する生活習慣として,朝食の欠食,不規則な間食摂取,運動不足,長時間のテレビ視聴,長時間のテレビゲーム,遅い就寝時刻,短い睡眠時間が同定された.また,追跡期間中に望ましい生活習慣を維持した場合に肥満発生のリスクが最も小さく,追跡期間中に生活習慣が悪化した場合や,望ましくない生活習慣が持続した場合に肥満発生のリスクは高かった.望ましくない生活習慣の数が多い子どもほど,肥満発生のリスクは上昇するという量反応関係を認めた.就学前の生活習慣と,その後の生活習慣には軽度の関連性を認めた.また,子どもの生活習慣は,居住地域,家族構成(祖父母の同居や兄弟の有無),母の就業形態,母の肥満などの社会家庭環境と関連を認めた.結論として,小児肥満予防は地域社会や家庭の協力による就学前からの継続的な対策が必要である.

平成19年3月19日受付
平成20年6月11日受理

キーワード

the Toyama study,birth cohort,social environment,lifestyle, child obesity

別冊請求先

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富山大学大学院医学薬学研究部保健医学講座 関根 道和