日本小児循環器学会雑誌 第24巻 第5号(606-614) 2008年
著者
宮川–富田幸子1),杉村 洋子2),中西 敏雄1),今中–吉田恭子3)
所属
東京女子医科大学循環器小児科1),千葉県こども病院集中治療科2),三重大学大学院医学系研究科修復再生病理学3)
要旨
背景:発生過程で,心外膜前駆組織(PE)から形成される心外膜は,上皮 – 間葉転換後,心筋層内に潜り込み,間質線維芽細胞,冠動脈平滑筋細胞と外膜周囲線維芽細胞に分化する.しかし,大動脈基部の冠動脈開口構成細胞の起源は不明である.細胞外基質糖蛋白であるテネイシンCは上皮 – 間葉/間葉 – 上皮細胞転換や神経堤細胞などの細胞運動を制御している
方法:PEウズラ–ニワトリキメラ,心臓神経堤(CNC)ウズラ–ニワトリキメラ,CNC除去ニワトリ胚を作成し,テネイシンC発現とPEおよびCNC由来細胞分布を検討した.
結果:PE由来細胞は,心外膜細胞,間質線維芽細胞,冠動脈平滑筋細胞と内皮細胞,心内膜細胞に分化していた.冠動脈開口部はPEとCNC由来細胞が形成に関与していた.テネイシンCは上皮 – 間葉転換時と,冠動脈開口形成時に特異的な発現を認めた.
結論:発達心におけるPE由来細胞の分布図を作成した.冠動脈開口部ではPEとCNC由来細胞が形成に関わり,テネイシンCは冠動脈形成で重要な役割を担っていることが示唆された.
平成19年8月20日受付
平成20年5月16日受理
キーワード
tenascin,coronary,epicardium,cardiac neural crest,development