日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第5号(620-627) 2008年
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著者

豊原 啓子,梶山 葉,芳本 潤,福原 仁雄,中村 好秀

所属

日本赤十字社和歌山医療センター心臓小児科

要旨

目的:Total cavo–pulmonary connection(TCPC)手術前症例において,上室頻拍の性質を明確にし,電気生理検査(EPS)および高周波カテーテルアブレーション(RFCA)の有用性を検討する.
対象:TCPC前に上室頻拍の既往を有する例および不整脈基質(すなわち頻拍を起こす原因となる場所)の存在を疑われた例の計16例を対象とした.
結果:4 例は頻拍が誘発されなかったためEPSのみ施行した.EPS時に頻拍を認めた12例は,2 つの房室結節を有する回帰性頻拍(twin AVNs)5 例,WPW症候群(房室副伝導路を介する房室回帰性頻拍)4 例,心房頻拍(AT)2 例,心房粗動 1 例であった.ATの 1 例を除いて11例にRFCAを施行し頻拍の除去に成功した.頻拍を認めた12例中 3 例(25%)に,手術中または臨床的に結節頻拍(JT)を認めた.この 3 例は無脾症候群であった.RFCAを施行した11例中TCPC到達例は 5 例で,4 例は周術期および術後に頻拍を認めなかった.
結論:TCPC手術前の上室頻拍を認めた症例に対してEPSおよびRFCAを行うことは,血行動態の悪化を来す周術期の頻拍を防ぐのに有用である.ただし,無脾症候群ではJTに留意する必要がある.

平成19年9月19日受付
平成20年5月27日受理

キーワード

total cavo–pulmonary connection,supraventricular tachycardia,radiofrequency catheter ablation

別冊請求先

:〒640-8558 和歌山市小松原通 4–20
日本赤十字社和歌山医療センター心臓小児科 豊原 啓子