日本小児循環器学会雑誌 第24巻 第5号(628-635) 2008年
著者
小林 奈歩1),津田 悦子1),小野 安生2),塚野 真也3),矢崎 諭1),山田 修1),越後 茂之1),中谷 武嗣4),八木原 俊克5)
所属
国立循環器病センター小児科1),静岡県立こども病院循環器科2),新潟県立新発田病院小児科3),国立循環器病センター臓器移植部4),心臓血管外科5)
要旨
背景:小児科領域での重症心不全に対する治療は,成人に比較し制約される点が多く,小児心臓移植候補者の予後を知ることは重要である.
方法:1990年から2006年までに院内臓器移植医学的適応症例検討会に,小児科から心臓移植適応について提示した60例(男42例,女18例)の予後について検討した.
結果:検討会提示時の年齢は 0~27歳(中央値13歳)であり,15歳以下の小児が48例(80%)であった.診断の内訳は拡張型心筋症が49%で,拡張相肥大型心筋症,拘束型心筋症,心筋炎,川崎病による虚血性心筋症を加えると80%を占め,先天性心疾患は19%であった.判定の結果は,移植適応が35例(58%),不適応が 9 例(15%),再検討が 9 例(15%),外科治療の方針が 7 例(12%)であった.左室補助人工心臓装着した症例は 8 例(13%)であった.予後は,死亡33例(55%),生存26例(43%),不明 1 例であった.死亡原因は,心不全死29例,突然死 4 例で,死亡時期は,検討会提示後 4 日~14年で,中央値137日であった.心臓移植施行は14例(23%)(海外12例,国内 2 例)で,移植時年齢は 1~21歳で,中央値は 5 歳であった.移植後の死亡は 3 例で,5 年生存率は75%であった.外科手術やβ遮断薬の導入による心機能保持例は14例(23%)であった.
結論:院内臓器移植医学的適応症例検討会に提示した小児の重症心不全患者の予後は極めて不良であった.しかし,心臓移植は予後を改善した.また,外科手術の介入やβ遮断薬の導入は予後を改善し得る
平成19年11月29日受付
平成20年6月11日受理
キーワード
orthotopic heart transplantation,β–blocker,dilated cardiomyopathy,restrictive cardiomyopathy,left ventricular assist support
別冊請求先
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京都府立医科大学小児循環器・腎臓部門 小林 奈歩