日本小児循環器学会雑誌  第25巻 第1号(45-52) 2009年

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著者

宗内  淳1),金谷 能明1),田ノ上禎久2),塩川 祐一2),山口賢一郎1),池田 和幸1),益田 宗孝3),大野 拓郎4),富永 隆治2)

所属

九州大学病院小児科1),心臓血管外科2),横浜市立大学外科治療学3),九州厚生年金病院小児科4)

要旨

背景:ファロー四徴症(TOF)術後遠隔期の突然死・不整脈発症要因に遺残肺動脈弁逆流(PR)による右室容量負荷がある.遠隔期PRに対する再手術例も増加してきたが,その至適時期や効果に関しては不明な点も多い.
目的:TOF術後遠隔期のPRに対する肺動脈弁置換術(PVR)の臨床効果について検討した.
対象と方法:2003年以降,当院でPVR(Carpentier-Edwards pericardial生体弁使用による)を施行した13例を対象とし,臨床症状と検査所見(胸部X線,心電図,心エコー図,心臓カテーテル検査)を術前後および遠隔期で検討した.
結果:心内修復時年齢4.9 ±4.7(1.0~18.3)歳,PVR時年齢23.4 ±11.5(7.9~45.3)歳,心内修復時からPVRまでの期間18.4 ±9.3(3.8~35.2)年,PVR後フォローアップ期間6.4 ±6.3(1.8~25.3)年であった.周術期および遠隔期死亡はなく,置換肺動脈弁の狭窄・逆流はなかった.心胸郭比,右室拡張末期容量/体表面積はPVR後に有意な減少が認められたが,PVR直後から遠隔期では変化がなかった.PVR前に心室頻拍/心室性期外収縮(VPC)6 例,心房細動(Af)/心房粗動(AFL)2 例,完全房室ブロック 1 例を認めた.術中cryoablationを 5 例では右室流出路に,1 例では右房狭部に施行したが,VPCが 2 例に,Afが 2 例に残存し,1 例で新たにAFLを発症した.1 例で植込み型ペースメーカ挿入が,他の 1 例で植込み型除細動器(ICD)の挿入が必要であった.
まとめ:TOF術後遺残PR患者におけるPVRは右室容量負荷軽減に効果があった.心室性不整脈は改善が認められる症例もあったが,三尖弁逆流(TR)等の残存した症例では心房性不整脈が残存した.術前後での電気生理学的評価を十分に行うとともにICDを含めた術後ペースメーカの必要性を認識しておく必要がある.

平成20年5月15日受付
平成20年10月30日受理

キーワード

tetralogy of Fallot,pulmonary valve regurgitation,pulmonary valve replacement,arrhythmia,long-term prognosis

別冊請求先

〒812-8582 福岡市東区馬出 3-1-1 九州大学病院小児科 宗内  淳