日本小児循環器学会雑誌 第25巻 第2号 2009年

静岡県立こども病院循環器センター
坂本喜三郎

「専門医とは何だろう?」
 「専門医とは,何のためにあるのだろう?」
 「専門医とは,誰のためにあるのだろう?」
 今回の巻頭言でこれらの項目に私見を述べるつもりはない(実際は,力量がない).
 では,なぜ巻頭言を書いているのか?
 理由は,“日本小児循環器学会専門医制度の立ち上げに携わった専門医制度委員会に,唯一の外科系会員として参加した”立場と経験から,外科系会員にとっての暫定指導医と専門医の関連性をきちんと伝える責務があると感じたからである.
 周知のことではあると思うが,日本小児循環器学会専門医制度が確立した以降に専門医を申請できるのは,“小児科専門医を取得した医師”で,“認定修練施設で必要な修練を積み”,かつ“適切な力量を獲得できた(試験と実績の両方で評価)”日本小児循環器学会会員となっている.したがって,制度確立以降に外科系会員が日本小児循環器学会(内科系)専門医を取得するのは極めて困難である.
 さて,暫定指導医である.専門医制度を設立するためには,専門医取得希望者の修練を行うための認定施設と指導医の確保・整備が必要である.施設認定に関しては専門医制度確立以降と同じ基準で行うことで継続性が確保できるが,問題は指導医である.現時点では,“小児科専門医”かつ“適切な力量を持つ”会員は存在するが,“認定修練施設で必要な修練を積み,試験を通過した”会員はいない.ここで登場するのが暫定指導医で,認定基準を“小児科専門医または基本領域の専門医(各年齢層の時代背景を考慮)”かつ“適切な力量を持つ(自己申告による実績を評価)”会員と設定した.
 こうした過程を経て,407名の暫定指導医,50の修練施設と34の修練施設群を認定(2009年 1 月31日時点)し,専門医育成の基盤を整えることができたのであるが,外科系会員に周知しておく必要を感じたのはまさにこの暫定指導医の考え方である.
 暫定指導医の認定基準では外科系会員でも申請可能で,実際に 3 名の外科系会員を認定した.暫定指導医から専門医への移行が可能である等の点も熟慮したうえでの申請と考える.以下に,外科系会員にとっての“暫定指導医”,“暫定指導医から専門医への移行”そして“専門医の更新”についてまとめたので参考にしていただければ幸いである.
 外科系会員であっても日本小児循環器学会専門医制度暫定指導医を申請することは可能で,条件を満たせば認定される.そのうえで,本来の専門医制度確立のための移行期に認定試験を通過できれば専門医になることも可能である.ただし,専門医の更新には当然のことながら“小児循環器専門医としての 5 年間(更新の規約・細則を参照)”の実績が求められる.
 外科系会員が,暫定制度を利用して暫定指導医を取得することは可能であるが,暫定指導医から専門医に移行するには“試験の壁”が,また,専門医を更新するには 5 年間の“小児循環器専門医としての実績”が求められることを十分に留意して,各自ご判断をお願いしたい.