日本小児循環器学会雑誌  第25巻 第2号(133-138) 2009年

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著者

根本慎太郎1),佐々木智康1),小澤 英樹1),垣田 真里1),勝間田敬弘1),岸  勘太2),奥村 謙一2),森  保彦2)

所属

大阪医科大学附属病院心臓血管外科1),小児科循環器部門2)

要旨

完全型房室中隔欠損症修復術における左側房室弁修復の良否は術後の予後を左右する重要な要素である.従来のtwo-patch法では,水平な心室中隔欠損閉鎖パッチ(VSDパッチ)の上端で左側前後共通弁尖間の生理的な接合を消失させ“cleft”として全閉鎖し左側房室弁を二尖化することに重点が置かれている.われわれはこの前後共通弁尖間の接合を左側中隔交連として再構築し生理的な弁構造を維持することで“cleft”全閉鎖に頼らない術式を行っている.その早期~中期成績を検討した.
方法:対象は本術式を施行した自験連続26例.男女比 = 15/11,手術時年齢は平均 7 カ月(1~39),Down症19/26,中等度以上の肺高血圧症22/26.合併心内病変は筋性部心室中隔欠損 4,二次孔心房中隔欠損または卵円孔開存18,Fallot四徴症 2.先行手術は肺動脈バンディング 2,Blalock-Taussig短絡 2,大動脈縮窄解除 1.共通弁尖形態はRastelli A型 7,B型 2,C型17.左側壁側尖の低形成 6,共通房室弁閉鎖不全 5.手術は心室中隔欠損孔をパッチ閉鎖後に同パッチ上縁に作成した垂直スリットに前後共通弁尖の交連を挿入固定し,一次孔心房中隔欠損をグル タルアルデヒド処理自己心膜パッチで閉鎖.いわゆる“cleft”閉鎖はなし 8,パッチ側交連部のみ13,全長閉鎖 5.交連部縫縮等の追加弁形成手技 10.同時手術は肺動脈形成 2,右心室流出路形成 2,筋性部心室中隔欠損閉鎖 2.
成績:手術死亡 0,外科的房室ブロック 0.再手術は左側房室弁形成 2(術後 1,12日目),筋性部心室中隔欠損閉鎖 1(術後 3 日目).退院後平均36.2カ月(14~39カ月)での死亡 0,中等度以上の左側房室弁閉鎖不全 5(4 例は無症状で投薬を必要とせず,1 例はアンジオテンシン変換酵素阻害剤とβアドレナリン受容体遮断剤投与下に経過観察中).
結論:修復後の前後共通弁尖の接合を“cleft”全閉鎖に頼らない本術式の早期~中期成績は良好であり,長期成績からの再評価が待たれる.特に“cleft”全閉鎖が不可能な左側房室弁口狭小例や左側壁側尖の低形成例に対するtwo-patch法の変法として簡単に付加できる有効な選択肢の一つであることが示唆された.

平成20年7月10日受付
平成21年1月5日受理

キーワード

complete atrioventricular septal defect,two-patch technique,septal commissure,left atrioventricular valve,surgical result

別冊請求先

〒569-8686 大阪府高槻市大学町 2-7
大阪医科大学外科学講座胸部外科学教室 根本慎太郎