日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第3号(243-248) 2010年

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著者

永田 弾1),石川 友一1),石川 司朗1),安田 和志1),中村 真1),佐川 浩一1),牛ノ濱大也1),総崎 直樹2),角 秀秋3)

所属

福岡市立こども病院感染症センター循環器科1),新生児循環器科2),心臓外科3)

要旨

Fontan循環を目指す左心低形成症候群(HLHS)患者に対して,侵襲性の高いNorwood手術は不可避な姑息的手術である.当院では心室機能低下が著しいハイリスクHLHSに対しては,両側肺動脈絞扼術(Bil-PAB)を第一姑息術として選択しているが,Norwood手術またはNorwood-Glenn術までの長期にわたる心房間と動脈管の血流維持は必要不可欠となる.Bil-PAB後,狭小化した心房間交通にはバルーン心房中隔裂開術(BAS)を行うが,その効果は限定的で,体循環維持に必須である動脈管開存に対する長期間のPGE1製剤の投与は,その副作用が無視できない.今回,心房間交通の狭小化,長期のPGE1投与による副作用と改善しない心室機能のため,侵襲の大きなNorwood手術が困難と判断された70生日のハイリスクHLHS(7生日;Bil-PAB,30生日;BAS)に低侵襲な心臓カテーテル法によるステント留置術(心房間ステント,動脈管ステント)を行った.留置後の肺血流増加による心不全に対して低酸素呼吸管理を必要としたが,240生日にNorwood-Glenn術に到達できた.本邦ではHLHSに対するステント留置術は報告が少なく,適応,効果,施行時期,手技,留置後の循環管理法などに不明な点が多いが,HLHS,なかでもハイリスクHLHSの治療戦略のひとつになる可能性がある.

平成21年7月24日受付
平成22年1月13日受理

キーワード

hypoplastic left heart syndrome,stent implantation,restrictive foramen ovale,patent ductus arteriosus,Norwood procedure

別冊請求先

〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出 3-1-1 九州大学病院小児科 永田 弾