日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第3号(251-255) 2010年

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著者

森島 重弘1),小野 隆志1),中澤 誠2),本多 正知3),工藤 恵道4)

所属

脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児心臓外科1),小児・生涯心臓疾患研究所2),心臓・循環器センター3),小児科4)

要旨

当初,心臓超音波検査では診断し得なかった左冠動脈入口部高位を伴う心室中隔欠損症の1例を報告する.症例は4カ月の男児.生直後から心雑音を認め,心臓超音波検査で心室中隔欠損症と診断し経過観察されていた.体重増加不良,心臓超音波検査において肺高血圧症を認め,早期の手術が必要と判断された.4カ月時に心臓カテーテル検査を施行した.中等度の肺高血圧症を伴い,肺体血流比は4.2であった.大動脈造影で左冠動脈入口部高位を認めた.再度心臓超音波検査を行ったところ,上行大動脈左側面に左冠動脈と考えられる管腔構造が存在し,本症の合併を疑う所見と考えられた.手術は冠動脈の損傷を避けるため大動脈周囲の剥離をせず,上行大動脈の左冠動脈起始部より高位置で大動脈遮断を行った.完全な心筋保護が得られ,外科的な合併症を回避し安全に手術を施行することが可能であった.

平成21年5月19日受付
平成22年1月21日受理

キーワード

high take-off of the left coronary artery,ventricular septal defect,echocardiography

別冊請求先

〒963-8563 福島県郡山市八山田 7-115 脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児心臓外科 森島 重弘