日本小児循環器学会雑誌 第26巻 第4号(332-337) 2010年
著者
福原 淳示,住友 直方,中村 隆広,市川 理恵,松村 昌治,阿部 修,宮下 理夫,谷口 和夫,金丸 浩,鮎沢 衛,唐澤 賢祐,麦島 秀雄
所属
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
要旨
背景および目的:器質的心疾患を伴わない小児および若年者の心房細動(AF),心房粗動(AFL)は比較的稀な不整脈である.臨床的にAF,AFLを認めた群(臨床群)とEPSでAF,AFLが誘発された群(誘発群)の臨床的背景を検討することが本研究の目的である. 対象および方法:対象は身体所見,胸部X線写真,心臓超音波検査で器質的心疾患を除外されたAFおよびAFL 50例(平均11.7±4.7歳)である.臨床的に記録された11例(臨床群)およびプログラム刺激で誘発された39例(誘発群)に分け臨床的特徴を比較検討した. 結果:臨床群,誘発群ともにAFLが91%,85%と多くを占めていた.臨床群ではAFは2例(18%)であり,誘発群のAFは18例(46%)であった.基礎不整脈のカテーテルアブレーション後はAF,AFLは誘発されなくなる傾向にあった.また,誘発されたAF,AFL症例ではその後の経過観察中にAF,AFLを認めた症例はなかった. 結論:われわれの予想以上にプログラム刺激で誘発されるAF,AFLが多いことが分かった.しかし,誘発された症例は無治療でも,その後AF,AFLを発症した症例はいなかった.以上より,小児および若年者では他の不整脈の検査中にのみ誘発されたAF,AFLに対してはカテーテルアブレーションの必要がないと考えられた.
平成21年11月10日受付
平成22年4月5日受理
キーワード
atrial flutter,atrial fibrillation,electrophysiological study,radiofrequency ablation
別冊請求先
〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町 30-1 日本大学医学部小児科学系小児科学分野 福原 淳示