日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第4号(338-344) 2010年

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著者

増山 郁1),桃井 伸緒1),遠藤 起生1),青柳 良倫1),三友 正紀1),福田 豊1),小野 隆志2),遠藤 雅人3),田中 高志4)

所属

福島県立医科大学医学部小児科1),総合南東北病院心臓血管外科2),東北文化学園大学医療福祉学部3),宮城県立こども病院循環器科4)

要旨

新生児期に複数の類洞交通が確認されたが,その後の経過で類洞交通が消失したために,治療方針が変更された純型肺動脈閉鎖の1例を経験した.新生児期の心臓カテーテル検査にて,低形成の右心室と冠動脈3枝への類洞交通を認めたため,一心室修復の適応が妥当であると判断し,日齢16にBlalock-Taussig短絡術を施行した.しかし,1年後の右心室造影では,類洞交通は消失しており,二心室修復への転換を図り,ガイドワイヤー穿通経皮的バルーン肺動脈弁形成術を行った.そののち,右心室容積の発育は得られたものの,二心室修復には不十分であり,6歳時にone and one half ventricular repairを施行した.術後1年の評価では,冠血流および心室壁運動は良好で,右心房圧の上昇を認めなかった.不整脈などの合併症もなく,無投薬で外来経過観察を継続している.純型肺動脈閉鎖症において,類洞交通の合併の有無は治療方針を左右する重大な因子であるため,その形態と血流動態の経時的な変化を繰り返し評価することが重要である.

平成21年7月24日受付
平成22年2月15日受理

キーワード

pulmonary atresia with intact ventricular septum,sinusoidal communication,right ventricular-dependent coronary circulation,percutaneous transluminal pulmonary valvuloplasty,one and one-half ventricular repair

別冊請求先

〒960-1295 福島市光が丘 1 福島県立医科大学医学部小児科 増山  郁