日本小児循環器学会雑誌 第26巻 第5号(392-399) 2010年
著者
宮崎 隆子1),山岸 正明1),八島 正文1),前田 吉宣1),山本 裕介1),小出 昌秋2),野村 耕司3),夜久 均4)
所属
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科1),聖隷浜松病院心臓血管外科2),埼玉県立小児医療センター心臓血管外科3),京都府立医科大学心臓血管外科4)
要旨
背景:主要体肺動脈側副血行路(MAPCA)合併心奇形に対し一期的肺動脈統合化手術(UF)と姑息的右室流出路再建術(pRVOTR)を中心とした外科治療を採用してきた.本稿では中期遠隔期成績の検討を行い,本治療方針の妥当性を検討する.
対象と方法:2001年から2009年に一期的UFを施行したMAPCA合併症例15例を対象とした.手術時年齢は中央値で1.0歳であった.手術は胸骨正中切開,体外循環使用下に一期的UFと心膜roll/patchによるY字型中心肺動脈再建術を施行した.2例に根治術を同時施行し,13例には段階的手術を選択し,肺血流供給路には右室―肺動脈心外導管を用い,導管径は正常肺動脈弁輪径の約75%とした.
結果:早期死亡および遠隔期死亡は認めなかった.根治術に14例が到達し,1例が待機中であった.一期的UF前後のpulmonary artery indexは139.7±88.6 mm2/m2から398.5±128.2 mm2/m2と有意に増加した.SpO2(平均値)も79%から88%と有意に上昇した.根治術前後の収縮期肺動脈圧は35.3±14.1 mmHgから29.3±2.2 mmHgと低下傾向を認めた.
結論:中期遠隔期成績は満足できるものであった.本術式により立体的な肺動脈の再構築と両肺への均等な血流分布,肺血管成長が得られた.本方針は根治術到達率も高く,有効な治療戦略であると考える.
平成22年1月4日受付
平成22年7月12日受理
キーワード
major aortopulmonary collateral arteries,one-staged unifocalization,palliative right ventricular outflow tract reconstruction,median sternotomy
別冊請求先
〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科 宮崎 隆子