日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第5号(428-433) 2010年

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著者

小野 隆志1),森島 重弘1),中澤 誠2),工藤 恵道3)

所属

財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児心臓外科1),小児・生涯心臓疾患研究所2),小児科3)

要旨

心室中隔欠損症に冠状動脈起始異常を合併した症例に同時手術を行った.症例は23歳女性,筋性流出部の小さな心室中隔欠損の診断でフォローアップされていた.心エコー検査上,大動脈弁右冠尖の逸脱変形の所見が認められるようになり,大動脈弁閉鎖不全も出現してきたため,手術を前提に心臓カテーテル検査を施行した.大動脈造影にて明らかな右冠尖の変形とともに右冠状動脈の走行異常を認めた.後日施行したMDCT検査で右冠状動脈の左冠洞起始と大動脈壁内走行疑いと診断された.冠状動脈狭窄に伴う臨床症状や明らかな心筋虚血を示す検査所見を認めなかったが,突然死の可能性も説明の上,同時手術を施行した.心室中隔欠損は両大血管下欠損で,右冠状動脈は左冠状動脈と同じ冠状動脈口から起始し,大動脈壁内走行していた.壁内走行部のunroofingと心室中隔欠損のパッチ閉鎖を施行し良好な結果を得た.術後のMDCT検査では,右冠状動脈修復部の狭窄や屈曲を認めなかった.

平成22年1月15日受付
平成22年6月14日受理

キーワード

anomalous origin of a right coronary artery,intramural course,unroofing,ventricular septal defect

別冊請求先

〒963-8563 福島県郡山市八山田七丁目115 総合南東北病院小児循環器外科 小野 隆志