日本小児循環器学会雑誌 第27巻 第3号(121-131) 2011年
著者
藤井 泰宏1),赤木 禎治2),谷口 学2),中川 晃志2),木島 康文2),大月 審一3),富井 奉子1),岩崎 達雄4),五藤 恵次4),戸田雄一郎4),岡本 吉生3),新井 禎彦1),笠原 真悟1),佐野 俊二1)
所属
岡山大学病院心臓血管外科1),循環器疾患治療部2),小児科3), 麻酔蘇生科4)
要旨
背景:乳児期に頻拍を認める基礎心疾患のないWPW症候群は,大部分が1歳までに頻拍が消失するが,一方その40%は5歳までに再び頻拍を認める.
目的:1歳未満で頻脈発作を発症したWPW症候群の予後を検討し,その管理について考察した.
方法:対象は胎児期から1歳までに頻拍を認めたWPW症候群36例で,電気生理検査(EPS)または高周波カテーテルアブレーション(RFCA)を施行し,その結果を検討した.
結果:36例中4例は,1歳時のEPSで副伝導路の室房伝導が消失または延長していた(A群).1歳までに頻拍は消失したが1歳時のEPSで頻拍が誘発されたのが5例(B群),頻拍のコントロールが不良で2歳までにRFCAを行ったのが9例(C群),1歳以降も長期にわたって頻拍を認め3歳以降でRFCAを行ったのが11例(D群),3カ月までに頻拍が消失したが,5歳以降に再び頻拍を認めたのが7例であった(E群).B,C,D,E群の32例(92%)にRFCAを行い,全例副伝導路の離断に成功した.合併症,再発を認めなかった.2歳までにRFCAを行ったB群,C群の計14例はすべて初回の検査で合併症なく副伝導路の離断ができた.
結論:1歳以下で頻拍を認めたWPW症候群の92%は,2歳以内で副伝導路の室房伝導が残存しているか,または一旦伝導が消失しても5歳以降に再び頻拍を認めた.1歳以下で頻拍を認めたWPW症候群症例は,その後も頻拍を認める可能性が高いため,積極的にEPSを行い適応があればRFCAを考慮すべきと考えた.
平成22年5月6日受付
平成22年9月30日受理
キーワード
WPW syndrome,supraventricular tachycardia,electrophysiological studies,radiofrequency catheter ablation
別刷請求先
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1 東京女子医科大学循環器小児科 豊原 啓子