日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第2号(62-68) 2011年

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著者

矢崎 諭

所属

国立循環器病研究センター小児循環器科

要旨

 純型肺動脈閉鎖(pulmonary atresia with intact ventricular septum:PAIVS)は病態に多様性がある疾患である.最終的修復は二心室修復もしくはFontan型修復であるが,そこに至るまでに選択する分岐路も数多い.三尖弁サイズと形態,右心室サイズと機能,類洞交通による冠循環への影響が修復の方向性を決定する主な条件である.二心室修復を目指す場合の初回治療としてバルーン肺動脈弁形成術が選択される機会が増加した近年の経験から,三尖弁輪径Z-score-1.5以上,右心室容積が正常予測値の70%以上で右心室依存性冠循環や流量の多い類洞交通がない症例においては,右心室-肺動脈の連続性作成を試みる治療方針に概ね合意が得られるであろう.新生児期の形態診断に基づいて治療が開始されるが,初期方針と異なる経過をたどる場合もまれではなく,経時的な病態の変化に応じた治療方針の変更も必要である.三尖弁のサイズと形態が方針決定における最重要な因子であること,シャント手術を要しても二心室修復が可能な場合があることなどを念頭に置いて診療にあたりたい.バルーン肺動脈弁形成術手技においては,マイクロカテーテルを併用したシステムが有用である.

キーワード

pulmonary atresia with intact ventricular septum, biventricular repair, univentricular repair, balloon valvuloplasty, catheter intervention

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国立循環器病研究センター小児循環器科 矢崎 諭