日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第3号(143-149) 2011年

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著者

水城 直人1),田中 高志2),小西 章敦3),安達 理4),新田 恩2),小澤 晃2),崔 禎浩3)

所属

仙台市立病院小児科1),宮城県立こども病院循環器科2),宮城県立こども病院心臓血管外科3),東北大学病院心臓血管外科4)

要旨

発熱,嘔吐,胸痛を主訴に劇症型心筋炎を発症した9歳女児例を報告する.不整脈と心不全の悪化で,4病日に緊急的に補助循環が導入された.合計14日間で補助循環から離脱した.心臓CTは38病日に初めて施行され,左室前側壁と乳頭筋,心室中隔に石灰化を認めた.退院前の81病日には心筋石灰化の範囲に大きな変化を認めなかったが,発症後1年の心臓CTで範囲縮小を確認した.また発症後1年の心臓カテーテル検査とシネ心臓MRI(cadiovascular magnetic resonance:CMR)で左室前壁の心室瘤を認めた.同時に壊死や線維化を描出する遅延ガドリニウム造影画像(late gadolinium enhancement:LGE)で,心筋部位によって貫壁性,外膜優位性,内膜優位性などさまざまな造影効果を確認し,最終的に心筋炎と診断することができた.さらに心血管造影で心筋収縮運動の異常を指摘できなかった中隔壁や右室心尖部などの部位にも,LGEによりびまん性の心筋線維化所見が出現していることもわかった.心筋炎回復後に心筋石灰化が縮小しながらも心室瘤が出現したことは,長期的な合併症として重要な病態である.また心筋症における心筋壁のLGE所見は,不整脈などの発生因子と関連し予後不良因子であるといった報告もあり,心室壁の組織学的評価が可能なCMRは心筋炎の診断上有用であると同時に,回復後の慢性期評価においても有用となり得る検査である.

2010年9月7日受付
2011年3月8日受理

キーワード

myocarditis, calcification, cardiac MR, cardiac CT, late gadolinium enhancement

別刷請求先

〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29
東京都立小児総合医療センター集中治療科 水城 直人