日本小児循環器学会雑誌 第27巻 第4号(163-167) 2011年
著者
八木原俊克
所属
国立循環器病研究センター
要旨
この30年あまりにおける形態学的知見の積み重ねと開心補助手段,術式開発などの進歩により,heterotaxy syndromeの主たる危険因子である総肺静脈還流異常,房室弁逆流などに対する外科治療,および最終手術としてのFontan手術で大きな成績向上がみられている.一定の条件を有する例に対するbiventricular repairについても比較的良好な長期予後が明らかになりつつある.それでも高度の心形態異常を伴うheterotaxyに対する外科治療は現在,先天性心疾患に対する外科治療の中で最も成績不良の領域であり,heterotaxyに対する治療体系を確立するためには,今後も個々の症例における心形態学的知見に基づいた詳細な把握と長期予後を含めた臨床研究,疾患概念の確立,そしてまだ十分には解明されていない刺激伝導系や冠血流路などの検索,遺伝子的探索研究などをさらに発展させる必要がある.
2011年7月1日受付
2011年7月2日受理
キーワード
heterotaxy, right isomerism, left isomerism, Fontan operation, biventricular repair
別刷請求先
〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1
国立循環器病研究センター小児心臓外科部長 市川 肇