日本小児循環器学会雑誌 第27巻 第6号(257-261) 2011年

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著者

宮地  鑑

所属

北里大学医学部心臓血管外科

要旨

後天性心疾患における低侵襲手術の発展は近年めざましいものがある.一方,先天性心疾患における低侵襲外科治療は,複雑心奇形ではほとんど行われていないのが現状で,動脈管開存(patent ductus arteriosus:PDA),心房中隔欠損(atrial septal def:ASD),心室中隔欠損(ventricular septal defect:VSD)などが中心である.われわれの施設ではPDAに対する内視鏡下動脈管閉鎖術(VATSPDA)は現在までに126例に行われ,極めて良好な成績である.さらに低出生体重児にも適応を拡大,満足できる結果を示している.コイル塞栓術との住み分けが今後の課題ではあるが,乳児・新生児や低出生体重児に対してはVATSPDAが優れていると思われる.ASDについてはAmplatzer Septal Occluderが導入され,本邦でも広く行われている.しかしながら,一旦,合併症を引き起こすと回復が手術よりも困難で,リスクの高い治療となることから,その使用については,リスクや遠隔期の問題などについて十分なコンセンサスを得てから行うべきであろう.VSDについてもカテーテルによるAmplatzer Septal Occluderが報告されているが,合併症の発生率の高さから現時点では,手術を優先すべきであろう.また,小切開アプローチをはじめ,完全内視鏡下閉鎖術などが行われている一方で,経右室アプローチによるVSD device closureが良好な成績を示しており,小児科医と心臓外科医の協同による“Hybrid approach”の今後の発展が期待されるところである.

2011年11月2日受付
2011年11月15日受理

キーワード

minimally invasive cardiac surgery, video-assisted thoracoscopic interruption, Hybrid approach, catheter intervention, thoracoscopic repair of VSD

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北里大学医学部心臓血管外科 宮地  鑑