日本小児循環器学会雑誌 第27巻 第6号(262-269) 2011年

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著者

岩朝  徹1),伴 由布子1),土井  拓2),森崎 裕子3)

所属

大津赤十字病院小児科部1),京都大学医学部附属病院小児科2),国立循環器病研究センター研究所分子生物学部3)

要旨

新生児マルファン症候群(neonatal Marfan syndrome:nMFS)は,一般的によく知られたマルファン症候群(classical Marfan syndrome:cMFS)と責任遺伝子であるFBN1は共通で,クモ状指等の外表奇形も似通っているものの,出生直後ないし乳児期早期より重篤な心肺機能不全を呈し予後不良である.MFSの中でも最重症型に位置しており,臨床像は大きく異なる.FBN1遺伝子の中でも心血管系のホットスポットとも言うべきexon 23-32の欠失が特徴とされ,遺伝子診断が望ましい.外表奇形などから本疾患を類推することは比較的容易であるが,診断に至っても現在のところ有効な治療は報告されておらず,多くが乳児期早期に死亡している.希少な疾患であり,本邦においての報告症例はわずかに12例に留まる.海外報告と臨床像・検査所見は同様であったが,僧帽弁形成術ないし僧帽弁置換術を行った2例は生存しており,僧帽弁への介入が予後改善をもたらす可能性が示唆された.近年LA-PCR法・MLPA法などの導入で以前は解析困難であった遺伝子診断が可能となっており,今後の症例蓄積が望まれる.

2010年12月13日受付
2011年11月22日受理

キーワード

neonatal Marfan syndrome, fibrillin, FBN1

別刷請求先

〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5丁目7番1号
国立循環器病研究センター小児循環器科 岩朝  徹