日本小児循環器学会雑誌  第27巻 第2号(98-104) 2011年

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著者

小坂 由道,麻生 俊英,武田 裕子,小野 裕國

所属

神奈川県立こども医療センター心臓血管外科

要旨

背景:腋窩ポケット・経胸腔アプローチ(腋窩アプローチ)によるペースメーカ移植術は,心外膜リードによるペーシング治療の問題点を解決できる可能性があると考え,2003年以降,経静脈リードの使用が困難な新生児,乳幼児に適用してきた.
目的:中期遠隔成績からみた腋窩アプローチの妥当性を検討すること.
方法:2003年9月02009年12月までの6歳以下17症例を対象とし,術後合併症とリード特性,リード不全回避率を検討した.比較対象として2003年8月以前に当院で腹直筋下ポケット・剣状突起下アプローチ(剣状突起下アプローチ)を行った20症例を用いた.
結果:手術時年齢,体重は中央値で9カ月(日齢406歳),7.1kg (2.6017kg).8例が胸骨正中切開の既往を有し,3例がペースメーカ再手術症例であった.移植されたリードは24本(心房:13本,心室:11本).観察期間は平均35±24カ月(最長76カ月).術後早期の本体細菌感染1例以外に合併症は認められず,遠隔期のリード特性劣化は1例のみであった.術後5年でのリード不全回避率は94%で,対象群(72%)と比較し良好であった.
結論:中期遠隔成績から腋窩アプローチは新生児,乳幼児のペースメーカ移植術において有用な方法であると思われた.

平成22年4月5日受付
平成22年12月21日受理

キーワード

pacemaker, thoracotomy, sick sinus syndrome, congenital heart block, polysplenia

別冊請求先

〒399-8288 長野県安曇野市豊科3100
長野県立こども病院心臓血管外科 小坂 由道