日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第2号(140-144) 2008年

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著者

寺野 和宏1),河内 貞貴1),安藤 達也1),藤原 優子1),衛藤 義勝1),森田 紀代造2)

所属

東京慈恵会医科大学小児科1),心臓血管外科2)

要旨

症例は3カ月男児.完全大血管転換と診断され,日齢6にLe Compte法によるarterial switch operationが施行された.術後の心エコー検査で圧較差70mmHgの肺動脈分岐部狭窄があり,術後3カ月時にカテーテルによるバルーン拡張術を施行した.バルーン拡張径⁄血管狭窄径として最大3.8の拡張を行い,圧較差は左肺動脈が56mmHgから16mmHgへ,右肺動脈が71mmHgから19mmHgへ改善した.バルーン拡張術後の経過は良好であったが,拡張術20日後に突然の循環不全となった.心エコー検査で大動脈肺動脈窓があり,バルーン拡張術による合併症と考えた.その後の外科的修復術で心不全症状は軽快した.本合併症は完全大血管転換術後の肺動脈狭窄に対するカテーテル治療として,まれではあるが極めて特異的な合併症である.術後の癒着形成は発生リスクを低下させず,どの年齢層でも起こり得る.拡張術直後に臨床症状が出現しないことも考えられ,外来経過観察に注意が必要である.

平成19年2月21日受付
平成19年12月19日受理

キーワード

transposition of the great arteries,balloon dilation,aortopulmonary window,complication

別冊請求先

〒654-0081 神戸市須磨区高倉台 1-1-1
兵庫県立こども病院循環器科 寺野 和宏