日本小児循環器学会雑誌  第24巻 第4号(530-535) 2008年

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著者

山村 英司1),工藤 恵道1),藤田 修平1),竹内 大二1),岸  勘太1),森  善樹1),富松 宏文1),藤原 優子2),中西 敏雄1)

所属

東京女子医科大学循環器小児科1),東京慈恵会医科大学附属病院小児科2)

要旨

背景:年長児や成人先天性心疾患患者の増加により,ステントを用いた大血管に対するカテーテル治療の必要性が増している.わが国では,大血管狭窄に対する治療にはPalmatz large stentが使用されることが一般的である.しかし,このステントでは径18mm以上に拡大できることはまれである.より大口径に拡大するには,より大きなステントが必要である.わが国で認可されて,径20mm前後まで拡大できるステントはPalmaz extra-large stentのみである.本ステントの大血管拡大における有用性について検討した.また,大動脈縮窄症における大動脈拡大術において必要なステント径を体表面積と対比検討するため,大動脈縮窄症手術後28症例で大動脈縮窄部近傍の大動脈径を測定した.
対象:ステント留置を試みたのは,大動脈縮窄の 4 例(未治療 2 例,術後再狭窄 2 例)と総動脈幹症術後の右室流出路心外導管狭窄 1 例の計 5 例.年齢は10~20歳であった.
結果:全例で留置に成功した.大動脈縮窄症例では圧較差が全例で10mmHg以下になった.狭窄部径は横隔膜レベルの大動脈径との比が全例で75%以上になった.心外導管狭窄では治療前圧較差が67mmHgであったものが10mmHgに改善した.大動脈縮窄症手術後28症例の大動脈径の検討では体表面積1.3m2以上になると60%の症例で縮窄近位部が,70%の症例で遠位部が径18mm以上となっていた.
結論:extra-large stentは大血管の拡大に必要かつ有用であった.

平成19年10月5日受付
平成20年4月16日受理

キーワード

stent,coarctation,counduit stenosis

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東京女子医科大学循環器小児科 山村 英司