日本小児循環器学会雑誌 第25巻 第6号(766-774) 2009年
著者
菱谷 隆
所属
埼玉県立小児医療センター循環器科
要旨
20世紀半ばに心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation:CPR)の原型が形成されてから,膨大なエビデンスの積み重ねを経て,現在 5 年ごとに国際蘇生法連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation:ILCOR)の専門家会議で心肺蘇生法の国際ガイドラインが発表されている.2005年にILCOR小児委員会が示した今後の課題は,(1)良い心停止の指標,(2)良い蘇生手順,(3)理想的な圧迫・換気比(compression-ventilation ratio:CV ratio),(4)CPRの品質評価,(5)気管チューブの固定法,(6)自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)の臨床データ,(7)ラリンゲアルマスクの使用データ,(8)酸素投与の利点と危険性,(9)抗不整脈と昇圧剤の使用データ,(10)人為的低体温療法,(11)心肺停止後の心機能傷害の同定と治療,(12)心停止中の線溶薬と抗凝固薬の使用,(13)組織還流の新しい評価法,(14)心停止後の転帰予測のための指標,である.これらの課題と炭酸水素ナトリウムの使用適応について最近の報告も含めて解説した.2009年 3 月にILCORの国際会議が日本で初めて開催された.2010年ガイドラインでは,蘇生法の一般化,普遍化を進めるとともに,さらにエビデンスの高いCPRが提唱されると思われる.日本もその一員として役割を果たすべき時がきている.
平成21年4月22日受付
平成21年9月4日受理
キーワード
cardiopulmonary resuscitation,International Liaison Committee on Resuscitation,basic life support,pediatric advanced life support,Consensus 2005
別冊請求先
〒339-8551 さいたま市岩槻区大字馬込2100 埼玉県立小児医療センター循環器科 菱谷 隆