日本小児循環器学会雑誌 第26巻 第1号(39-48) 2010年
著者
板谷 慶一1),宮地 鑑1),小原 邦義1),石井 正浩2)
所属
北里大学心臓血管外科1),小児科2)
要旨
Fontan循環はその成立が長期成績や運動耐応能に大きな影響を与えることからこれまで多くの流体力学的な検討がなされてきた.コンピューターを用いた流体シミュレーション(computational fluid dynamics:CFD)は有力な手法であり,1995年以来現在まで19のFontan循環のCFDモデルの報告例がある.これらを比較検討し,その現状と展望について検討した.形状,メッシュの設定,計算方法はコンピューター技術の発展とともに精度の向上が見られ,詳細な手法の検討がなされてきたが,生理的なモデルを作成するという点ではいまだ検討課題が多い.またすべてのモデルで指標として用いられているエネルギー損失(energy loss)は臨床的な評価が困難である.近年ではコンピューター上で,仮想手術や至適術式を検討する報告などがみられる.術後経過の予測や評価に関する計算の精度は十分に高いと考えられる一方で,成長や変性などを加味した長期予後の予測に関しては,いまだ十分ではないと考えられる.
平成21年6月15日受付
平成21年10月30日受理
キーワード
Fontan circulation,computational fluid dynamics
別冊請求先
〒228-8555 神奈川県相模原市北里1-15-1 北里大学心臓血管外科 板谷 慶一