日本小児循環器学会雑誌 第26巻 第5号(359-367) 2010年
著者
齋木 宏文1),鄭 輝男1,3),城戸佐知子1),田中 敏克1),藤田 秀樹1),富永 健太1),佐藤 有美1),小川 禎治1),大嶋 義博2)
所属
兵庫県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2), てい小児科クリニック3)
要旨
背景:先天性大動脈弁狭窄症の治療は多岐にわたるが,適切な治療選択は重要な課題である.
方法:1989~2009年に先天性大動脈弁狭窄症に対して介入した大動脈狭窄単独例24例と大動脈縮窄合併例10例の34例を対象とし初期治療と予後を後方視的に総括した.初期治療は術前状態や弁形態を総合的に検討し,合併症のリスクが低いと判断すれば経皮的大動脈弁形成術(PTAV),そうでない場合は直視下大動脈弁交連切開術(OAC)を選択した.弁形成に適さないと判断した症例はRoss手術または人工弁置換(Ross/AVR)を選択した.
結果:大動脈弁狭窄単独例は介入年齢5.3±5.7歳,観察期間8.8±5.4年で,初期介入はPTAV9例,OAC6例,Ross/AVR9例であった.再介入は2例(22%),5例(83%),2例(18%),死亡例はRoss/AVRの3例であった.PTAVとOACの比較では観察期間,術前後の圧較差,弁輪径に有意差はなく,PTAV例で6カ月未満の児が有意に多く(p<0.05),術前ARの頻度が有意に低かった(p<0.05).大動脈縮窄合併例は介入年齢0.48±0.71歳,観察期間5.9±6.1年で,大動脈弁への初期介入はPTAV6例,OAC4例であった.全例,大動脈修復は良好に行われ,PTAV5例,OAC2例は大動脈弓修復前または同時に施行した.PTAV例は3例(50%)に再介入し,1例が遠隔期にクモ膜下出血で死亡した.OAC例は再介入した1例を含め,全例死亡した.
結論:適切な症例選択によりPTAVは初期治療として低侵襲性を生かし,かつ再介入率の低い治療になりうる.
全文平成21年10月5日受付
平成22年4月19日受理
キーワード
congenital aortic stenosis,balloon aortic valvuroplasty,commissurotomy
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