日本小児循環器学会雑誌  第26巻 第5号(375-383) 2010年

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著者

圓尾 文子1),大嶋 義博1),吉田 昌弘1),島津 親志1),日隈 智憲1),井上 武1),山口 眞弘2)

所属

兵庫県立こども病院心臓血管外科1),明石市医師会立明石医療センター心臓血管外科2)

要旨

目的:当院における気道閉塞病変を合併した先天性心疾患患者の概略を把握し,その外科治療成績を検討すること.
方法:1984年以降に当院で外科治療が行われた気道閉塞病変を合併していた先天性心疾患患者70名を対象とした.気道閉塞病変の内訳は気管狭窄が50例,気管気管支軟化症が20例であった.気管狭窄に対する手術は43例に行われた.心血管,気管の同時修復を方針としてきた結果,同時手術施行症例が35例であった.心血管術後に気管手術を行ったのが6例(計画的二期手術は1例),他施設での同時術後の気管再手術が2例であった.気管手術を施行しなかったのが7例あった.気管気管支軟化症20例に対しては大血管吊り上げ術を行ったものが12例,心血管修復のみ施行し,吊り上げを施行しなかったのが8例であった.これらの症例の治療成績を後方視的に検討した.
結果:気管狭窄と心血管の同時手術35例中,病院死亡は4例(11.4%)あった.単変量解析による病院死亡の危険因子として心内病変の存在(p=0.046),二期的胸骨閉鎖(p=0.02),術後腹膜透析(p=0.0007),体外循環時間(生存例206±68分間,死亡例309±61分間,p=0.007)が有意であったが,多変量解析ではいずれも有意ではなかった.術後に縦隔炎を2例,脳梗塞を1例,低酸素脳症を1例に合併した.抜管は22名(66%)で成功した.晩期死亡は3例であった.二期的手術では死亡はなかった.気管気管支軟化症例では早期死亡はなく,18例(85%)で抜管に成功した.晩期死亡が2例あった.
結論:気管狭窄と先天性心疾患の同時手術は治療戦略上,概ね妥当であった.病院死亡の危険因子解析結果から,胸骨閉鎖不能や腹膜透析を要する長時間体外循環症例では二期的手術を考慮すべきことが示唆された.気管気管支軟化症に対する大血管吊り上げ術を含めたわれわれの治療戦略は有効であった.

平成21年2月5日受付
平成22年5月31日受理

キーワード

congenital heart disease,congenital tracheal stenosis,tracheobronchomalacia,surgical repair

別冊請求先

〒654-0081 兵庫県神戸市須磨区高倉台1-1-1 兵庫県立こども病院心臓血管外科 圓尾 文子