日本小児循環器学会理事長 山岸敬幸

日本小児循環器学会理事長
山岸敬幸
(2022年4月28日)

『国内外の不安な情勢の中にも、明るい「Academic & Social」に向けて』

 2022年が始まり、約3か月が過ぎました。
 まず、昨年末から懸念されていたCOVID-19オミクロン株は、年明けとともに、あっという間に第6波を形成しました。この波はこれまでよりも大きく、子どもたちの中にも感染が広がり、感染者対応に加えて、多くの家族内感染や濃厚接触により業務に支障をきたす施設も増えていると思います。会員の皆様の小児循環器・成人先天性心疾患の患者さんとご家族のためのご尽力に敬意を表し、また皆様のご無事を祈念致しております。学会のCOVID-19特別対策チームも再活性化し、全国修練施設や患者会の皆様と連携して、効果的な感染対策について発信・情報共有していきます。本号の記事もご覧ください。
 そして、ウクライナで戦争が始まり、会員の皆様もショックを受けておられることと思います。まず戦災に遭われている方々に、心よりお見舞い申し上げます。子どもたちまでが戦禍にさらされている報道には、胸が締め付けられる思いと、私たちに何ができるのかという自問自答を繰り返す毎日かと存じます。日本小児科学会では支援の方法やHPを通じての国際メッセージなどが急遽検討され、ユニセフのウクライナ緊急募金への協力などが呼びかけられています。日本小児循環器学会も分科会として足並みを揃え、会員の皆様と思いを共有し、当学会としてできる支援を考えていきたいと思います。
 国内外で不安な情勢の中ではありますが、「Academic & Social」をテーマとする日本小児循環器学会の活動は、新たな年度に向けてますます活発です。本号で紹介されている分科会、webinar、教育セミナーの報告や、留学体験記、受賞のお言葉などからも、最近の様々な力強い活動を感じることができますので、ぜひご一読下さい。そして、いよいよ7月には札幌の第58回学術集会へとつながります。その頃にはなんとかCOVID-19の終息を期待して、皆様と現地の学術集会を楽しみたいと、学会および学術集会関連委員会・事務局では準備も本格化しています。ぜひ奮って日頃の成果をご発表いただき、会員相互のacademicな議論とsocialな懇親を深め、明日の診療・教育・研究に生かしてまいりましょう。
 また、とても嬉しいニュースとして、今年も学会から新たな小児循環器専門医が誕生します。昨年COVID-19禍の厳しい環境の中、研鑽を重ねて見事試験に合格した方々です。小児循環器・先天性心疾患領域の安心・安全な生涯的シームレスな診療を提供するためには、小児循環器専門医の力が必須です。新たに施行される『成育基本法』の「成育医療等の提供に関する施策」に関する基本的な事項にも、「小児期から成人期にかけて必要な医療を切れ目なく行うことができる移行期医療の支援等、小児慢性特定疾病を抱える児童等の健全な育成に係る施策を総合的に推進する」という項目があり、これを実現するための具体的な行動目標として、学会では引き続き、質の高い専門医の育成と維持、そして次世代への継承に尽力する必要があります。当学会の「小児循環器専門医」は、学会が認定する専門医であり、「小児科専門医」のような「基盤専門医」が受けている日本専門医機構の認定を、今のところ受けてはいません。「基盤専門医」の次にある「サブスペシャルティ専門医」が専門医機構から認定を受けるには、やや高いハードルがあります。しかし、「小児循環器専門医」は、専門医エリア・各委員会の多大なご尽力により、小児系で初めて専門医機構から認定を受ける「サブスペシャルティ専門医」の最も有力な候補の一つとして関連各方面から認められており、現在、認定申請手続きが進んでいます。会員の皆様には、ぜひ私たちの専門医に誇りを持って、わが国の安心・安全な専門診療を支えていただければと思います。
 2022年、学会では学会誌、HP、web教育コンテンツなどのさらなる充実を図り、会員の皆様の診療・教育・研究に役立つ情報をたくさん発信していきたいと思います。学会・委員会活動など、お手伝いいただくこともあるかと存じますが、皆の「小循」の益々の発展のためにも、ご協力いただければ誠に幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。