日本小児循環器学会理事長
山岸敬幸
(2023年3月31日)

 桜満開の新年度、WBCでの日本の優勝・王者奪還の興奮冷めやらぬ中、今年最初のニュースレターの巻頭のご挨拶をさせていただきます。昨年のサッカーワールドカップに沸いた日本中が、さらに(それ以上に)盛り上がり、皆様もスポーツの素晴らしさをまた実感されていらしたことと思います。侍JAPANは本当に強かった! 確かによい選手が揃い、準備段階からチームワークも磨いていましたが、試合を重ねるごとに強くなり、最終的にイタリア、メキシコ、アメリカ撃破につながったように感じたのは、私だけではなかったと思います。WBC栗山監督が尊敬し、心の師と仰ぐ往年の三原監督(現役引退後、巨人、西鉄などの監督を歴任し、「三原マジック」で知られる)が残した「三原ノート」には、「和して勝つ」に対する「勝って和す」という言葉があるそうです。これは、勝つためにはチームワークが必要だが、チームワークというものは一朝一夕にできるものでもない。しかし、「勝つ」すなわち「結果にこだわる」ことによって自然にチームワークもよくなり、チームは強くなっていく、という戦略を意味しています。侍JAPANはまさにそうでした。「Academic & Social」で日本小児循環器学会が世界に発信し続けていくためにも、成果にこだわり、成功体験を積み重ねることによって、オールJAPANの学会の結束を益々強くしていくことができるような気がして、勇気をもらいました。

 年度末、COVID-19禍は続いていますが、ようやく各地で4年ぶりの送別会なども開催されるようになってきました。退任記念講演会などでは、多くの偉大な先輩方のご講演をうかがって感銘を受ける場面も多いですが、退任の時、何を残すかで「上・中・下」が決まる、というお話を聞きました。受け継ぐ身としては、お金は残してほしいですが、お金を残すのは「下」だそうです。成すべき仕事を残すのが「中」で、よい人材を残すのが「上」ということです。やはり、「人づくり」すなわち次世代育成が最も重要なのです。今年の大河ドラマは「どうする家康」、学会でも「どうする理事長」という場面はとても多く、重ね合わせて視聴してしまっていますが、磐石の天下泰平の世を実現した家康の言葉の中にも「重荷が人を作る、身軽足軽では人はできない」とか、「諫めてくれる家臣は、一番槍をする勇士よりも値打ちがある」など、「人づくり」につながるものが多くあります。学会としても次世代育成、特に小児循環器専門医の拡充、小児心臓血管外科医の新たな教育プログラムの発展に力を注ぎ、毎年「人」を育て、残していきたいと思います。今年、専門医に合格された先生方には、この場をお借りして、心よりお祝いとお喜びを申し上げます。そして、このニュースレターにも、頼もしい若手の活躍が紹介されていますので、ぜひご覧ください。

 2023年度も、学会では学会誌、HP、web教育コンテンツなどのさらなる充実を図り、会員の皆様の診療・教育・研究に役立つ情報をたくさん発信していきたいと思います。7月には第59回学術集会も控えています。鈴木孝明会長のご挨拶をご覧いただき、楽しみにして下さい。そして、会員の皆様には、いつも、わが国の安心・安全な専門診療を支えていただいていることに感謝します。また、学会・委員会活動など、私たちの「小循」の益々の発展のために、ご協力いただければ誠に幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。