利益相反(COI)

医学研究の利益相反(COI)に関する共通指針
Policy of Conflict of Interest in Medical Research

序文

 医学、医療の進歩は20世紀後半から21世紀にかけてめざましく、多くの新しい治療法、予防法を創出している。 2014年には、国策として「健康・医療戦略推進法」及び「独立行政法人日本医療研究開発機構法」の制定を受けて、2015年4月には独立行政法人日本医療研究開発機構が設立され、画期的な医薬品、生物製剤、医療機器の開発や再生医療の展開に向けた戦略的な取り組みが産学官の連携を軸に本格化している。また、アカデミア参加による再生医療、医療機器関連の起業化も成果を挙げつつあり、臨床開発が活発化している。

 日本小児循環器学会(以下、本学会と略す)は、人間(試料・情報を含む。)を対象として、疾病の成因の究明および病態の理解や、疾病の予防や医療における診断方法および治療方法の有効性の検証またはその改善を通じて様々な診療ガイドラインの策定を行い、国民の健康の保持増進または患者の予後若しくは生活の質の向上に資することを目的とした事業活動を行っている。産と学がより一層連携を推進していくことは、根拠に基づく医療および医療経済の観点からも極めて重要であり、社会的な責務を果たさなければならない。

 一方、公的な存在である研究機関、学術団体などの研究者が医学系研究を通して産学連携を積極的にすればするほど、特定企業の活動に深く関与することになり、その結果、研究者には公的な利益のための社会的な責務と、産学連携活動に伴い生じる個人が得る利益との間に衝突・相反する状態が必然的・不可避的に発生する。こうした状態が「利益相反(conflict of interest : COI)」と呼ばれるものであり、このCOI状態を学術機関・団体が組織として適切に管理(マネージメント)していくことが、産学連携活動を適切に推進するうえで乗り越えていかなければならない重要な課題となっている。医学系研究に携わる者が、資金提供者となる企業、団体などとの深刻な COI 状態を自ら適切に申告しないと、バイアスリスクが高まり、研究対象者の人権や生命の安全・安心が損なわれることが起こりうるし、研究の方法、データの解析、結果の解釈が歪められる恐れも生じる。事実、そのような事案として、2013年に、我が国の5大学を中心に実施された降圧薬バルサルタン臨床研究に対する質と信頼性にかかる疑惑問題が起こった。企業からの奨学寄附金やデータ管理・統計解析などの役務の受け入れが不透明で、バイアスリスクに対するマネージメントや契約などの適正な対応がなされておらず、人為的なデータ操作により企業側に有利な結論が導かれ、研究不正疑惑へと発展した。その結果、国際誌に公表された複数の論文が撤回され、該当する診療ガイドラインの質だけでなく信頼性も大きく損なわれた。このような事態を再発防止する観点も含めて、文部科学省・厚生労働省は臨床研究および疫学研究に関するそれぞれの倫理指針を統合した形で「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(告示2014年12月22日)」を公表し、特に介入研究の実施に対する研究機関の長および研究責任者の責務をより明確化し、倫理審査、モニタリング、監査、COI管理などの強化充実を求めている。一方、全国医学部長病院長会議は「研究者主導臨床試験の実施にかかるガイドライン」を2015年2月に公表し、特に承認薬を用いた侵襲性のある介入研究について、企画立案から臨床試験の適正な実施に係る手順(臨床試験の公的な登録、データ管理、統計解析、データ解釈、論文作成など)を具体的に示しており、企業の関わりを可能とした臨床試験の質と信頼性を確保するための COI マネージメントについても具体例を挙げて示している。その後、2018年4月より臨床研究法が施行され、1)未承認・適応外の医薬品等の臨床研究 、2)製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究は特定臨床研究と位置付けられ、医薬品等の有効性・安全性を明らかにする臨床研究を行う際には、臨床研究の実施の手続、利益相反の管理、認定臨床研究審査委員会による審査意見業務の適切な実施のための措置、臨床研究に関する資金等の提供に関する情報の公表が義務付けられた。

 製薬工業協会は、2011 年に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表し、2013年分より会員企業は医療機関、研究機関、医療関係団体、財団、医療関係者への資金提供額を自社ウエブサイト上で公開している。米国では、製薬企業からの資金提供先とその金額の詳細を政府機関がOpen payment programにより公開している。昨年、米国の著名な医師らが国際一流雑誌に掲載した論文に深刻な COI 状況を申告開示しなかったとしてメディアから指摘され社会問題となった。我が国も、企業と医師等との金銭関係の詳細がウエブサイト検索可能な環境となっており、臨床系学会は、診療ガイドライン策定参加者のCOI管理とともに申告内容に齟齬があれば説明責任が強く求められている。

 一方、研究機関が自ら疾病の予防法、診断法、治療法の開発に取り組み、当該研究の成果を企業へライセンス供与、大学発ベンチャー起業等を推進する取り組みが強化され、公共の利益のために社会貢献することも求められている。また、公的資金を受けている研究機関が製造販売企業の特許権や株式等を保有していたりすると潜在的な COI が発生する。その結果、事業活動において決定権あるいは監査権を持っている研究機関の上級役職者が自ら研究機関の利益を優先する形で判断がなされたり、意思決定が行われると研究の公正性や信頼性を歪めて研究対象者および患者のリスクが高まる。また、優先的にそれら医薬品や医療機器の販売促進に関われば、不当な利益を得ようとしているのではないか、論文を発表することによりもっと利益を追求しようとしているのではないか、という疑念が生じる。

 米国では研究機関自体の客観性、公正性と integrity を確保するため、American Association of Medical College(AAMC)とAmerican Association of Universities(AAU) が2002年に研究機関自らにかかinstitutional COI(組織COIと略す)にかかるガイドラインを公表し、2008年には人間を対象とした臨床研究にかかる組織COI管理のためのmodel policyを提案した。米国National Science Foundation (NSF)(2005)およびthe National Institutes of Health (NIH)(2013)はそれぞれ研究者に組織COIの開示を求めている。2013 年には International Committee for Medical Journal Editors(ICMJE)がRecommendations for the Conduct、 Reporting、 Editing、 and Publication of Scholarly Work in Medical Journalsを公表し、世界の約6000に及ぶ医学雑誌が準用している。 ICMJEも COI disclosure formとして著者個人のCOIだけでなく、所属する研究機関のinstitutional COIの開示も論文発表時に求めている。我が国も、一般社団法人全国医学部長病院長会議が「医学系研究機関における組織COI管理ガイダンス」を2018年に公表し、臨床研究における組織COIの公開と管理の重要性を強調している。それらの動向を踏まえて、日本医学会もCOI管理ガイドラインの一部改訂版を公表している。

 本学会は、医学系研究の質と信頼性を確保するために、本学会共通の利益相反指針を会員に徹底・遵守させることにより適切に COI 管理を行い、社会に対する説明責任を果たしていく。今回、国の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」及び臨床研究法との整合性と、内外のCOI管理に関する動向を踏まえて、本学会利益相反(COI)に関する改訂を行った。

I.目的

 本学会は、産学連携にかかる医学系研究活動において、社会的責任と高度な倫理性が要求されていることに鑑み、「医学系研究の利益相反(COI)に関する共通指針」(以下、本指針と略す)を策定する。本指針の目的は、適正な産学連携の推進を基本として、会員などが医学系活動に取り組む過程で発生する COI 状態を適切に管理することにより、研究の実施や成果の発表及び診療ガイドラインの策定、それらの普及・啓発などの活動におけるバイアスリスクを管理し、中立性と公正性を維持した状態で推進し、内科学に含まれる疾患の予防・診断・治療の進歩に貢献することにより社会的責務を果たすことにある。したがって、本指針では、会員などに対して COI 管理についての基本的な考えを示し、本学会の会員などが各種事業に参加する場合、自らの COI 状態を自己申告によって適正に開示し、本指針を遵守することを求める。なお、会員が所属する研究機関等の就業規則、COI指針等を遵守すべき事は言うまでもない。

 COI管理の基本的な考え方として、研究機関及び研究者は、

 1)産学連携にかかる医学系研究の実施に関して倫理性、医学性、科学性の担保を前提に、利害関係にある企業、法人、団体、個人等からの外部資金源(寄附金または契約による研究資金)、医薬品・機器、及び役務等を必要に応じて契約(対価や成果責任の明確化)により適正に受け入れ医学系研究を実施する。しかし、成果責任を取らないとする企業等から外部資金を調達する研究者主導の臨床研究は臨床研究法の対象となるが、臨床研究結果の解釈や公表の過程に資金提供者が影響力の行使を可能とする契約等の締結は、研究の独立性、公明性を損なうことから避けなければならない。

 2)当該研究成果の質と信頼性を確保するために、契約文書に記載された内容(資金源、資金提供者の役割、研究機関自体及び研究者個人のCOI状態)等については適切に開示し、問題となるCOI状態が発生しない様に予め管理する。それらの情報を研究実施計画書、IC文書、COI申告書および論文内に的確に記載し公開する。

 3)社会から論文内容に関して疑義を指摘されれば、責任著者(corresponding author) は関係企業とともに説明責任を果たさなければならない。

 4)研究機関が医学系研究、教育、診療の質だけでなく、信頼性やintegrityを確保するためには、研究機関がそれ自身の組織COI状況、および上級役職者と特定企業や営利団体などとの組織COI状況を公表することにより利害関係の透明化がなされなければならない。

II.対象者

 COI状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。

  • 本学会会員
  • 本学会の学術講演会などで発表する者(非会員も含む)
  • 本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術講演会担当責任者(会長など)、各種委員会の委員長、特定の委員会(学術集会運営委員会、診療ガイドラインなどの策定にかかる委員会、学術誌編集委員会、倫理委員会、医療安全委員会、利益相反委員会など)委員、暫定的な作業部会(小委員会、ワーキンググループなど)の委員
  • 本学会の事務職員
  • (1)~(4)の対象者の配偶者、一親等の親族、または収入・財産を共有する者

III.対象となる活動

 本学会が行うすべての事業活動に対して本指針を適用する。

  • 学術講演会(年次総会含む)、支部主催学術講演会などの開催
  • 学会機関誌、学術図書などの発行
  • 診療ガイドラインなどの策定
  • 研究および調査の実施
  • 研究の奨励および研究業績の表彰
  • 認定医・専門医および認定施設の認定
  • 生涯学習活動の推進
  • 関連学術団体との連絡および協力
  • 営利を目的とする団体・企業等との連携および協力
  • 国際的な研究協力の推進
  • 社会に対する内科学の進歩と普及及び医療への啓発活動
  • その他目的を達成するために必要な事業(例、臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業など)

 特に、下記の活動を行う場合には、所定の様式に従って、会員は発表時に発表内容に関連する企業との過去3年間における COI 状態が所定の様式に従い開示されなければならない。

本学会が主催する学術講演会(以下、講演会)などでの発表
学会機関誌などの刊行物での発表
診療ガイドライン、治療指針、マニュアルなどの策定
当該分科会の事業活動と関係のない学術活動や講演会、座談会、ランチョンセミナー、イブニングセミナーなどでの発表

 但し、企業主催・共催の講演会等については、座長/司会者も講演者と同様に COI 状態の開示を行う。

 なお、発表演題に関連する「医学系研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断方法および治療方法の改善、疾病原因および病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される基礎的並びに臨床的研究であって、倫理審査の対象となる医学系研究をいう。人間を対象とする医学系研究には、個人を特定できる人間由来の試料および個人を特定できるデータの研究を含むものとし、文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2014 年 12 月 22 日公表)に定めるところによるものとする。

IV.「医学系研究に関連する企業・法人組織、営利を目的とする団体」とは、医学系研究に関し次のような関係をもった企業・組織や団体とする。

  • 医学系研究を依頼し、または、共同で行った関係(有償無償を問わない)
  • 医学系研究において評価される療法・薬剤、機器などに関連して特許権などの権利を共有している関係
  • 医学系研究において使用される薬剤・機材などを無償もしくは特に有利な価格で提供している関係
  • 医学系研究について研究助成・寄附などをしている関係
  • 医学系研究において未承認の医薬品や医療器機などを提供している関係
  • 寄附講座などの資金源となっている関係

VCOI自己申告の項目と開示基準

 対象者は、申告者個人および申告者の所属研究機関そのもの、或いは過去に共同研究者、分担研究者の関係、或いは現在そのような関係にある所属研究機関・部門の長となる。
 申告者個人のCOIは、以下の(1)~(9)の事項で、開示基準額を超える場合に所定の様式(JSIM様式3-A,B)に従って申告するものとする。なお、COI自己申告に必要な金額は、以下のごとく、各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする。

  1. 医学系研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下、企業・組織や団体という)の役員、顧問職については、1つの企業・組織や団体からの報酬額が年間100万円以上とする。
  2. 株式の保有については、1つの企業についての1 年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が100万円以上の場合、あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合とする。
  3. 企業・組織や団体からの特許権使用料については、1つの権利使用料が年間100万円以上とする。
  4. 企業・組織や団体から、会議の出席(発表、助言など)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、一つの企業・団体からの年間の講演料が合計50万円以上とする。
  5. 企業・組織や団体がパンフレット、座談会記事などの執筆に対して支払った原稿料については、1つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計50万円以上とする。
  6. 企業・組織や団体が提供する研究費については、1つの企業・団体から、医学系研究(共同研究、受託研究、治験など)に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る研究契約金の総額が年間100万円以上のものを記載する。
  7. 企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄附金については、1つの企業・団体から、申告者個人または申告者が所属する講座・分野または研究室に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金の総額が年間100万円以上のものを記載する
  8. 企業・組織や団体が提供する寄附講座に申告者らが所属している場合とする。但し、申告者が実質的に使途を決定し得る寄附金の総額が年間100万円以上のものを記載する。
  9. その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、1つの企業・組織や団体から受けた総額が年間5万円以上とする。

 但し、開示基準(1)「企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職」とは,研究機関に所属する研究者が特定企業の役員,顧問職に就任し,契約により定期的にかつ継続的に従事し報酬を受け取る場合を意味しており,相手企業からの依頼により単回でのアドバイスなどの提供は開示基準(4)「企業や営利を目的とした団体より,会議の出席(発表,助言)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当,講演などの報酬」として申告すること。さらに,(6)、(7)については、すべての申告者は所属する部局(講座、分野)あるいは研究室などへ関係する企業や団体などから研究経費、奨学寄附金などの提供があった場合に申告する必要がある。なお、企業などから提供される研究費・寄附金に係る判断基準額については,申告者が実質的に使途を決定し得る金額を申告すると明確に示した.申告された内容の具体的な開示、公開の方法については所定の様式に従う。組織COIとして、申告者が所属する研究機関そのもの、或いは所属研究機関・部門(大学,病院,学部またはセンターなど)の長と過去に共同研究者、分担研究者の関係、或いは現在そのような関係にある場合、申告者が関わる本学会事業活動に影響を及ぼす可能性が想定されれば、以下の事項で所定の様式(JSIM様式3-C)に従ってCOI申告するものとする。なお、自己申告に必要な金額は、以下のごとく、各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする。

  1. 企業・組織や団体が提供する研究費については、1つの企業・団体から、医学系研究(共同研究、受託研究、治験など)に対して、申告者が実質的に使途を決定し得る研究契約金の総額が年間1,000万円以上のものを記載する。
  2. 企業・組織や団体が提供する寄附金については、1つの企業・団体から、申告者個人または申告者が所属する所属機関・部門そのもの或いは所属機関・部門の長に対して、実質的に使途を決定し得る寄附金の総額が年間200万円以上のものを記載する。
  3. その他として、申告者所属の研究機関、部門あるいはそれらの長(過去 3 年以内に共同研究,分担研究の関係)が保有する株式(全株式の5%以上)、特許使用料、あるいはベンチャー企業への投資などがあれば,組織 COI として記載する

VI.医学系研究、特に侵襲性のある介入研究実施にかかる注意事項

  1. 新薬承認のための治験は GCP (Good Clinical Practice)を遵守して実施される。市販後の医薬品を用いた研究者主導の大規模介入研究は医薬品の有効性、安全性の検証と、臨床現場での適正化使用或は標準的な治療法に重要な情報と根拠を提供するものであり、倫理指針に基づいて実施される。後者は、企業にとって販売促進の視点から市販後臨床試験への関心が高く、いろいろな形での協力や支援(資金、労務など)がなされることからバイアスリスクが高く、疑惑が発生しやすいと指摘されている。会員はヘルシンキ宣言、医学系研究に関する倫理指針、臨床研究法、COI指針、全国医学部長病院長会議公表の「研究者主導臨床試験の実施にかかるガイドライン」および関係法令等を順守しなければならない。会員はいかなる介入研究の実施においても研究対象者の人権・生命を守るための特段の配慮が求められる。
  2. 会員が侵襲性のある介入研究を自主的に研究者主導で実施する場合、企業・組織・団体・個人等からの外部資金、医薬品・医療機器或は専門的な知識・技術を持つ人材による役務を受け入れる機会が多い。そのためには、所属機関を窓口として、契約により実施する臨床研究は、共同研究あるいは委託受託研究として対応し、資金提供者の成果責任を明確にし、使途制限、対価、役割分担について明記すべきである。一方、使途制限のない奨学寄附金や研究資金の受け入れは研究者主導臨床研究の資金源として可能である。外部資金として共同研究費、受託研究費または奨学寄附金(unlimited grant)が介入研究に使われる場合、本学会の申告基準額以上であれば資金源(funding source)として当該資金提供者とその役割を研究成果公開時に明記し、公開を原則に透明性の確保に努めなければならない。
  3. 医学系研究結果が医療従事者、患者、その他の人々に幅広く利用できるようになることは、公益につながる.従って、人間を対象としたすべての医学系研究の実施に際しては、公的なデータベースを通じて登録し、研究結果は原則的に論文の形で公表されなければならない。
  4. 論文の作成・公表にあたり、国際標準(ICMJE Recommendations)を念頭に著者資格を明確にしなければならない。著者資格の基準を満たさないメディカルライター、統計専門家、その他の支援を受けた人々(所属)に対しては「謝辞Acknowledgment」の項目にて資金源とともに明記する。また、「資金提供者の役割(Role of the funding source)」の項目を設けて、契約を基に利害関係者から臨床研究の実施あるいは論文作成の過程で労務・役務の形で支援を受ける場合には論文内容に影響を及ぼすと想定されれば、透明性を確保するためにそれらの役割を明記(図1)しなければならない。他の利害関係も記載・公開する。特に、研究責任者及び関係する企業の両者は、第三者から疑義を指摘されれば説明責任を果たさなければならない。
  5. 派遣された企業所属の研究者が派遣研究者、社会人大学院生、非常勤講師などとして研究機関に所属し、研究成果を講演あるいは論文発表する場合には、当該企業名も明記しなければならない。
  6. 企業に所属していた者が異なる研究機関に転職した場合、その後5年間は当該企業に関係する研究成果を発表する際、所属していた元企業名も併記しなければならない。

VII. COI状態との関係で回避すべき事項

1.対象者の全てが回避すべきこと
 医学系研究の結果の公表(研究結果の学会発表や論文発表)や診療ガイドラインの策定などは、わが国の医療の質の向上に大きく貢献しており、純粋に科学的な根拠と判断、あるいは公共の利益に基づいて行われるべきである。本学会の会員などは、医学系研究の結果とその解釈といった公表内容や、医学系研究での科学的な根拠に基づく診療(診断、治療、予防)ガイドライン・マニュアルなどの作成について、その医学系研究の資金提供者・企業の恣意的な意図(不当な取引誘因や販売促進の手段等)に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約を資金提供者などと締結してはならない。
 具体的には、以下については回避すべきである。

  1. 臨床試験研究対象者の仲介や紹介に係る契約外報奨金の取得
  2. ある特定期間内での症例集積に対する契約外報奨金の取得
  3. 特定の研究結果に対する契約外成果報酬の取得

2.研究責任者・研究代表者が回避すべきこと
 医学系研究、特に臨床試験、治験などの計画・実施に決定権を持つ研究責任者・研究代表者には、次の項目に関して重大な COI 状態にない(資金提供者との利害関係が少ない)と社会的に評価される研究者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。
 具体的に、研究責任者・代表者は、当該研究に関わる資金提供者との金銭的な関係を適正に開示する義務を負っており,以下に記載する事項については特に留意して回避すべきである.

  1. 当該研究の資金提供者・企業の株式の保有および当該企業の役員等
  2. 研究課題の医薬品、治療法、検査法等に関する特許権および特許料を取得している者
  3. 当該研究の資金提供者・企業からの学会参加に対する正当なる理由以外の旅費・宿泊費等の受領者
  4. 当該研究にかかる時間や労力に対する正当な報酬以外の金銭や贈与の取得者
  5. 研究機関へ派遣された企業所属の派遣研究者,非常勤講師および社会人大学院生が当該研究に参加する場合,実施計画書や結果の発表において当該企業名を隠ぺいするなどの不適切な行為
  6. 当該研究データの集計,保管,統計解析,解釈,結論に関して,資金提供者・企業が影響力の行使を可能とする状況
  7. 研究結果の学会発表や論文発表の決定に関して,資金提供者・利害関係のある企業が影響力の行使を可能とする契約の締結

 但し、(1)~(4)に該当する研究者であっても、当該医学系研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、かつ当該医学系研究が社会的に極めて重要な意義をもつような場合には、その判断と措置の公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該医学系研究の研究責任者・代表者に就任することができるが、社会に対する説明責任を果たさなければならない。また、企業との契約内容が(5)~(6)に該当する可能性がある場合には,実施結果の論文公表時に資金提供者の役割と関与の詳細を論文末尾に記載し公開しなければならない.

VIII.実施方法

1.会員の責務
 会員は医学系研究成果を学術講演などで発表する場合、発表者のすべては当該研究実施に関わる COI 状態を発表時に、本学会の所定の書式で適正に開示するものとする。研究などの発表との関係で、本指針に反するとの指摘がなされた場合には、当該会員はその趣旨を理解し全面的に協力しなければならない。理事会(理事長)はCOIを管轄する委員会(以下、利益相反委員会と略す)に審議を求め、その答申に基づき、妥当な措置方法を講ずる。

2.役員などの責務本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術講演会担当責任者(会長など)、各種委員会委員長、特定の委員会委員、および作業部会の委員は本学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わる COI 状態については、就任する時点で所定の書式(JSIM様式3)にしたがい自己申告書(就任時の前年から過去3年間)を提出しておかなければならない。また、就任時の年、或いはその後、新たにCOI状態の変更が生じた場合には、8週以内に様式3によって追加申告を理事長宛に行うものとする。理事長は当該事業の公明性、中立性を確保するため、役員等の人事に関して適切に管理しなければならない。

 すべての役員(編集委員会の編集長、編集委員を含めて)は就任時に COI自己申告書の提出が義務付けられる。また、査読にかかわる編集委員あるいは査読者も COI マネージメントの対象者として含められる。基本的には、査読を依頼する場合、投稿論文筆者との間に COI状態があるか否かの判断は査読候補者に委ねるべきで、査読結果に対して COI の説明責任が果たせないと判断した場合には辞退を可能とする。学術講演や学術雑誌による研究成果の情報発信は社会還元への大きな道筋であり、それらが公明性、中立性を担保しているかどうかの説明責任は、最終的に理事長が果たさなければならない。

3.利益相反(COI)委員会の役割
 利益相反委員会は、産学連携による医学系研究の適正な推進、研究成果の論文公表、さらに診療ガイドラインの策定にかかるバイアスリスクを回避するために、研究者の立場に立って COI 状態を適正にマネージメントするためのアドバイザー的な役割を果たしていく。また、重大なCOI状態が会員に生じた場合、あるいは、COIの自己申告内容が不適切で疑義があると指摘された場合、当該会員の COI 状態をマネージメントするためにヒアリングなどの調査を行い、その結果を本学会の長に答申する。
 COI委員会は、理事長の諮問のもとに下記の所掌事項を取り扱い答申する。

  1. COI状態にある会員個人からの質問、要望への対応(Q & A作成)
  2. 役員および発表者(非会員含む)、診療ガイドライン策定参加者の事業活動においてバイアスリスクにかかる COI状態の判断ならびに助言、指導
  3. 研究倫理、出版倫理の教育研修にかかる企画立案への協力と啓発活動
  4. 会員個人の COI 申告に関する疑惑が生じた時の調査活動、改善措置の勧告に関すること
  5. 日本医学会 COI 管理ガイドラインの更新ごとに COI 指針の見直し、改訂に関すること

4.理事長の役割
 理事長は、役員などが本学会の事業を遂行するうえで、重大な COI 状態が生じた場合、あるいは COI の自己申告が不適切であると認めた場合、利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて改善措置などを指示しなければならない。また、会員が本学会以外の医学雑誌(特に国際誌)に投稿し公表する際には、当該雑誌の COI 申告様式に従って適切に開示することを啓発しなければならない。第3者から特定の会員個人の疑義や疑問が医学雑誌掲載の形で発せられれば、速やかに対応させるとともに信頼性確保に努めなければならない。

 理事長は、所属する会員などに COI 状況に係る疑義や疑惑には学会組織として適切かつ速やかに対応し、検証の結果、不当な疑惑あるいは告発と判断された場合は、学会としての社会的説明責任を果たすとともに、当該個人に対する非難に対して、学会としての見解と声明などを社会に公表(ホームページ掲載など)し、信頼性の回復と確保に努めなければならない。一方、当該の疑義や疑惑が正当であれば、事実関係の検証結果を示し、当該学会が再発防止に向けた対応策を発信すべきことは言うまでもない。

5.学術講演会責任者の役割
 学術講演会責任者(会長)は、発表者(非会員も含む)が医学系研究の成果を発表する場合に所定の様式にてCOI開示が適切に行われているかどうかの検証をしなければならない。特に、企業などが関わる医学系研究結果の発表に際しては、発表内容が中立的な立場で公平に公表されているかどうかを聴衆が判断できる環境を提供することにあり、本指針を順守せず、COI 開示をしない発表については公表の差し止めなどの措置を講ずることができる。この場合には、速やかに発表予定者に理由を付してその旨を通知する。なお、これらの措置の際には利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
 また、企業や営利団体が主催・共催するランチョンセミナー、イブニングセミナーあるいは研究会や講演会においては、座長/司会者も講演者と同様なスライドを用いた方式にて、関連する企業・団体の名称を聴講者に開示し、企業名を読み上げなければならない。なお、読み上げる企業数が多い場合には、別のプロジェクターでスライド映写にて開示するなど適切に対応しなければならない。

6.編集委員長の役割
 基本的に、日本医学会医学雑誌編集ガイドライン(2015)に準拠して対応する。COI管理の視点から、学会機関誌などの刊行物で、医学系研究にかかる原著論文、総説、診療ガイドライン、編集記事、意見などが科学性、倫理性を担保に中立的な立場で公表されることが基本原則であり、学会誌編集委員長は、それらの実施が関係する倫理指針や本指針に沿ったものであることを検証し、発表内容の質とともに信頼性の確保を行わなければならない。公表された論文等について誤った記載が発覚したり、誠実[honesty] や公正性 [integrity] についての疑問が生じることがある.研究の誠実性や公正性に関して疑問が生じたり、ミスコンダクトの申立てがあった際の編集者の対応として、日本医学会医学雑誌編集者会議(JAMJE)では、Committee on Publication Ethics (COPE:出版倫理委員会)(http://publicationethics.org/) から公表されている手順に従うことを推奨しており、その中にCOI開示も含まれている。

1)投稿論文のCOI管理
 医学系研究の実施から結果公表過程(研究資金源、企画とデザイン、プロトコール作成、データ集計と処理、データ管理と解析、論文作成など)にかかる著者と企業および企業関係者の具体的な役割に関する情報や著者の COI 状態を記載させ、論文公表に際して両者の利害関係のより一層の透明化を図るとともに、第三者視点での研究内容の中立性、公平性の確保が基本原則となる。そして、すべての著者は公表された研究結果の質と信頼性に対しては責任を負わなければならない。公表される研究結果の判断者は社会(国民、患者、医師など)であり、そのための透明性の確保が大前提でもある。

(1)和文雑誌の発表者
 和文雑誌の発表者は会員であることが多いので、各分科会における学術集会・講演会における COI申告書と同じ項目で対応が可能であるが、非会員の投稿者についても当該分科会の COI指針に従う事の了解を得て、所定の様式にて全著者はCOI状態の開示をしなければならない。

(2)英文雑誌の発表者
 学術雑誌の論文発表に際し、著者に求められるCOI自己申告書の様式は、日本医学会医学雑誌編集ガイドラインおよび日本医学会COI管理ガイドライン(2017)に従う。両ガイドラインは、医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)公表のRecommendations for the Conduct、 Reporting、 Editing、 and Publication of Scholarly Work in Medical Journals ( 2013以後適宜更新)との整合性化を図っており、本学会もICMJE提案のCOI disclosure formsを参考に英文誌編集委員会が作成する。

著者は研究の公正性と信頼性を確保するために,論文内容に関係する企業などとの COI 状態を所定の様式に従い自己申告し、契約にて行われる企業との医学系研究については,企画,プロトコール作成,実施, モニタリング,監査,データ集計,統計学的解析,データ解釈,論文原稿作成,レビューなどにおける資金提供者(企業関係者等)の役割と関与を当該論文の [Role of the funding source]或いは[Acknowledgements」として明確に記載しなければならない。また、個々の著者らが研究企画から論文公表までのプロセスでどのような役割を果たし寄与したかを[Contributors(寄与者)]として論文中に明確に開示することもauthorship(著者資格)の視点から求められる。

 英文論文と和文論文について記載法を例示する(図1).一方,規定されたCOI状態がない場合も,「The authors state they have no conflicts of interest」などの文言を同部分に記載する.

2)COI違反者への対応
 編集委員会は、当該論文掲載後に本指針に違反(虚偽の申告など)していたとする情報が提供された場合、COI 委員会との連携にて事実関係を再確認し、本指針に反する場合には COPE(Committee of Publication Ethics)が提案する手順が参考となる。著者に対して事実確認を行い、その内容に応じて改善や掲載の差し止め、論文撤回、謝罪文の掲載を求めるなどの措置を理事長の了解のもとに講ずることができる。この場合、速やかに当該論文投稿者に理由を付してその旨を通知しなければならない。また、当該刊行物などに編集長名でその旨を公開することができる。

7. 診療ガイドライン、治療指針等作成にかかるCOIマネージメント
 医薬品、医療機器の適正使用や治療の標準化に関する診療ガイドラインは医療現場でもっとも関心が高く、影響力の強い指針として使われている。現在、数多くの診療ガイドラインや診療指針などが学術団体から公表され、我が国の医療の質の向上に大きく役立っている。しかし、それらのガイドラインや指針の策定にかかる委員会には専門的知識や豊富な経験を持つ医師が委員として参加するが、関連する企業との金銭的な COI 関係が深い場合も多い。事実、企業側に有利なpublication biasやreporting biasが起こりやすいとの指摘があり。そのような懸念を起こさせないための COI 管理が必要となっている。また、当該学会自体が特定企業と金銭的な関係が深い場合にはバイアスリスクが高いと社会から見られることもあり、学会自体のCOI状態(組織COI)も開示公開を行う。
 診療ガイドライン策定にかかる委員長および委員(外部委員含む)の選考は、専門家のガイドライン作成参画を排除するようなものであってはならないが、診療ガイドライン策定に参加するすべての委員(診療ガイドライン統括委員会、診療ガイドライン策定(作成)委員会、システマティックレビュー委員会、外部評価委員)には、利益相反状態の開示(JSIM 様式3)を求めて適切に管理することが重要である。ガイドライン作成にかかわるすべての委員のCOI状態とともに、診療ガイドラインを策定する当該学会のCOI状態も日本医学会診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンス(2017)に示されている表1、表2にて個別に当該診療ガイドライン中に開示しなければならない。また、表3に示す金額を超える各項目の基準額のいずれかを超えている委員については、審議には参加することは可能であるが、余人をもって替えがたい場合を除き議決権を持つべきではない。基準額を大幅に超えるような COI状態がある場合には、委員候補は自ら就任を辞退しなければならない。

表1

表2

表3 診療ガイドライン策定参加者の議決権に関する基準額

診療ガイドライン策定参加者の個人 COI

4.講演料5.パンフレットなど執筆料6.受け入れ研究費7.奨学寄附金
200 万円200 万円2,000 万円1,000 万円

 各分科会においてはそれぞれの状況も異なることが予想されるため、内科学会としてはあくまで参考のための基準であり、各学会においてはそれぞれの事情に応じていくらを超えたら議決権を持たないようにするのかを決めることが適切である。

8. 学会にかかる組織COI管理
 医学系研究,特に人間を対象とした臨床研究の実施や成果公表,あるいは診療ガイドライン策定のプロセスにおいて,当該の研究者に対して上級役職者(理事長,理事等)が師弟,同僚,交友,親族などの関係にあれば,直接あるいは間接的に影響を及びやすい組織 COI (Institutional Conflict of Interest)事案例が報告されている.例えば,学会あるいはその上級役職者が,特定企業から多額の寄附金が提供されていたり,あるいは特定企業の株,ロイヤリティを保有していたりすると,そのような状況下での研究成果や成果発表および診療ガイドライン策定については COI の評価や倫理面での公平性、客観性、独立性が担保されにくい状況が想定される.学会理事長は、企業・法人組織、営利を目的とする団体から学会組織自体へ支払われる額(地方会開催も含めて)を、①研究助成、共同研究、受託事業、②寄附金、③学術集会等収入(企業関連のセミナー、シンポジウム等)について会計年度を単位としてそれぞれの総件数および総額を企業ごとに一元管理し、組織 COI として適切に開示しなければならない。

9.その他
 その他の委員長・委員は、それぞれが関与する学会事業に関して、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて理事会は改善措置などを指示することができる。

IX. COI開示請求への対応

 本学会は所属する会員、役員のCOI状態に関する開示請求が分科会外部(例、マスコミ、市民団体など)からなされた場合、妥当と思われる請求理由であれば、理事長は COI 委員会に諮問し、個人情報の保護のもとに事実関係の調査を含めて、できるだけ短期間に実施し、答申を受けた後、速やかに当該開示請求者へ回答する。

医学系研究成果の論文公表後、当該論文に関して産学連携にかかる疑義を指摘された場合、編集委員会と COI 委員会とが連携して疑義の解明に努め、学会の長は説明責任を果たす。しかし、それぞれの委員会で対応できないと判断された場合、学会の長は外部委員(有識者)を含めた調査委員会にて対応し、疑惑事案の真相解明に向けて迅速にかつ的確に対応し、答申を受けた後、速やかに開示請求者に対して説明責任を果たすべきである。一方、医学系研究が実施された研究機関での疑惑が想定される場合には、研究責任者(研究代表者)として当該研究を実施した研究機関の長に真相解明のための調査報告を求めるべきである。

X.指針違反者に対する措置と不服の申し立て

1.指針違反者に対する措置
 本学会理事会は、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有しており、倫理委員会(あるいは該当する委員会)に諮問し、答申を得たうえで、理事会で審議した結果、重大な指針違反があると判断した場合には、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置の全てまたは一部を講ずることができる。

  1. 本学会が開催するすべての講演会での発表禁止
  2. 本学会の刊行物への論文掲載の禁止あるいは論文撤回
  3. 本学会の講演会の会長就任禁止
  4. 本学会の理事会、委員会、作業部会への参加禁止
  5. 本学会の評議員の解任、あるいは評議員になることの禁止
  6. 本学会会員の資格停止、除名、あるいは入会の禁止など

指針違反者に対する措置が確定した場合、当該会員が所属する他の内科系関連学会の長へ情報提供を行うものとする。

3. 不服申し立て審査手続

  1. 不服申し立ての審査請求を受けた場合、理事長は速やかに不服申し立て審査委員会(以下、審査委員会という)を設置しなければならない。審査委員会は理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員 1 名以上により構成され、委員長は委員の互選により選出する。利益相反委員会委員は審査委員会委員を兼ねることはできない。審査委員会は審査請求書を受領してから 30 日以内に委員会を開催してその審査を行う。
  2. 審査委員会は、当該不服申し立てにかかる倫理委員会委員長ならびに不服申し立て者から必要がある時は意見を聴取することができる。
  3. 審査委員会は、特別の事情がない限り、審査に関する第 1 回の委員会開催日から 1 ヶ月以内に不服申し立てに対する答申書をまとめ、理事長に提出する。
  4. 審査委員会の決定を以って最終とする。

XI社会への説明責任

 理事長は役員および会員の COI 状態について、社会的・道義的な説明責任を果たす必要性が生じた場合、理事会の決議を経て必要な範囲で本学会の内外に開示もしくは公表し、組織としての社会への自己責任と説明責任を果たすものとする。この場合、開示もしくは公開される COI情報の当事者は、理事会もしくは決定を委嘱された理事に対して意見を述べる機会を与えられるが、開示もしくは公開について緊急性があり、意見を聞く余裕がないときはその限りでない。

XII.研究倫理、出版倫理に関する教育研修

 学会の長は、会員等や編集員会・倫理委員会・利益相反委員会及び診療ガイドライン策定にかかわる委員等の関係者を対象に、生命倫理、研究倫理、COI管理、出版倫理、関係法令等の教育・研修を継続して受ける機会を確保しなければならない。そのためには、認定医或は専門医資格を取得予定あるいは更新するための申請資格条件として倫理教育研修の受講を義務づける。

XIII. 関連学会の連携

 本学会は、本指針の見直し作業,細則に関する情報交換などを行うために,日本医学会、日本内科学会、日本小児科学会の利益相反(関連)委員会と必要に応じて連携して行く.

XIV. 細則の制定

 本学会は,本指針を運用するために必要な細則を制定することができる.

XV. 指針の改正

 本指針は、社会的要因や産学連携に関する指針、法令の改正、整備ならびに医療および研究をめぐる諸条件に適合させるためには、日本医学会の動向を踏まえて定期的に見直しを行い、改正することができる。

XVI.施行日

  1. 本指針は2014年7月6日より施行する.
  2. 本指針は2016年7月に改訂し,2016年7月より施行する.
  3. 本指針は2021年3月20日に改訂し、2021年7月7日より施行する.

参考資料:参照する利益相反マネージメントガイドライン

「医学研究の利益相反に関する共通指針」の細則(日本小児循環器学会)

本学会は、「医学研究の利益相反(Conflict of Interest, COI と略す)に関する共通指針」を、日本医学会COIマネージメントガイドライン2014年、日本内科学会の医学研究の利益相反に関する共通指針に則り策定した。本学会会員などのCOI状態を公正にマネージメントするために、「医学研究の利益相反に関する共通指針の細則」を次のとおり定める。

第1条(本学会講演会などにおけるCOI事項の申告)

 第1項
会員,非会員の別を問わず発表者は本学会が主催する講演会(年次総会・講演会,教育講演会),市民公開講座,支部主催学術講演会(地方会等)などで医学研究に関する発表・講演を行う場合,筆頭発表者は,配偶者,一親等の親族,生計を共にする者も含めて,今回の演題発表に関連する企業や営利を目的とした団体との経済的な関係について演題応募前3年間におけるCOI状態の有無を開示しなければならない。 筆頭発表者は発表スライドの最初(または演題・発表者などを紹介するスライドの次)あるいはポスターの最後に所定の様式1により開示するものとする.本会年次総会学術集会においては、抄録登録時においても様式2に準じてホームページ上で自己申告しなければならない.

第2項
「医学研究に関連する企業・法人組織,営利を目的とする団体」とは,医学研究に関し次のような関係をもった企業・組織や団体とする.

医学研究を依頼し,または,共同で行った関係(有償無償を問わない)
医学研究において評価される療法・薬剤,機器などに関連して特許権などの権利を共有している関係
医学研究において使用される薬剤・機材などを無償もしくは特に有利な価格で提供している関係
医学研究について研究助成・寄付などをしている関係
医学研究において未承認の医薬品や医療器機などを提供している関係
寄付講座などのスポンサーとなっている関係

第3項
「医学研究」とは,生命科学研究や基礎医学研究から人間を対象とする臨床医学研究(個人を特定できる人体由来の材料および個人を特定できるデータに関する研究を含む),臨床試験、社会医学研究までと定義する。

第2条(COI自己申告の基準について)

 COI自己申告が必要な金額は,以下のごとく,各々の開示すべき事項について基準を定めるものとする.

医学研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下,企業・組織や団体という)の役員,顧問職については,1つの企業・組織や団体からの報酬額が年間100万円以上とする.
株式の保有については,1つの企業についての1 年間の株式による利益(配当,売却益の総和)が100万円以上の場合,あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合とする.
企業・組織や団体からの特許権使用料については,1つの権利使用料が年間100万円以上とする.
企業・組織や団体から,会議の出席(発表)に対し,研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については,一つの企業・団体からの年間の講演料が合計50万円以上とする.
企業・組織や団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料については,1つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計50万円以上とする.
企業・組織や団体が提供する研究費については,一つの企業・団体から医学研究(受託研究費,共同研究費など)に対して支払われた総額が年間100万円以上とする.
企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄付金については,1つの企業・組織や団体から,申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間100万円以上の場合とする.
企業・組織や団体が提供する寄付講座に申告者らが所属している場合とする.
その他,研究とは直接無関係な旅行,贈答品などの提供については,1つの企業・組織や団体から受けた総額が年間5万円以上とする.

但し,⑥,⑦については,筆頭発表者個人か,筆頭発表者が所属する部局(講座,分野)あるいは研究室などへ研究成果の発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業や団体などからの研究経費,奨学寄付金などの提供があった場合に申告する必要がある.

上記の申告すべき項目のなかで,企業・法人組織・団体からの奨学寄付金の受け入れ先は,機関の長(学長か病院長)と講座・分野の長と大きく2 つに分かれている.前者の場合,研究者個人との関わりはないと判断されがちだが,企業・法人組織・団体から機関の長を経由した形で奨学寄付金が発表者個人か,発表者が所属する部局(講座,分野)あるいは研究室へ配分されている場合にはその額を申告する必要がある.

次に,疑義が出やすい申告項目としては,企業からの寄付金などを非営利法人(例,NPO)や公益法人(例,財団)を介しての資金援助(受託研究費,研究助成費)が該当するが,同様に自己申告する必要がある.資金援助金が高額であればあるほど研究成果の客観性や公平性が損なわれている印象を第三者に与えやすいことから,社会からの疑念や疑義が生じないようにするためにも関連企業からの研究支援が間接的にあると想定される場合には自らCOI自己申告をしておくことが望ましい.

第3条(本学会雑誌などにおける届出事項の公表)

 本会の学会誌(日本小児循環器学会雑誌)などで発表(総説,原著論文など)を行う著者全員は,会員,非会員を問わず,発表内容が本細則第一条第2項に規定された企業・組織や団体と経済的な関係を持っている場合,投稿時から遡って過去3年間以内におけるCOI状態を投稿規定に定める様式3(自己申告によるCOI報告書)を用いて事前に雑誌編集事務局へ届け出なければならない.corresponding authorは当該論文にかかる著者全員からのCOI状態に関する申告書を取りまとめて提出し,記載内容について責任を負うことが求められる.このCOIの記載内容は,論文末尾,AcknowledgmentsまたはReferencesの前に掲載される.規定されたCOI状態がない場合は,その旨同部分に記載される.投稿時に明らかにするCOI状態は,共通指針のIV、細則第2条にしたがう.さらに当該研究が企業依頼の場合、著者には資金提供者が当該研究のデザイン、データ収集、解析等のマネージメント、解釈、論文執筆にどのように関わったかを本文末尾に記載する.

第4条(役員,委員長,委員などのCOI申告書の提出)

 第1項
本学会の役員(会長,理事,監事,庶務 ),次回会長,学術講演会(教育講演会,支部主催などの講演会)の会長,各種委員会のすべての委員長,特定の委員会(学術集会企画部会,教育委員会,学会誌編集委員会,診療ガイドライン策定に関わる委員会,倫理委員会,医療安全委員会,利益相反委員会)の委員,作業部会委員,学会の従業員は,申告すべき事項について,就任時の前年度3年間におけるCOI状態の有無を所定の様式4にしたがい,新就任時と,就任後は1 年ごとに,COI自己申告書を理事会へ提出しなければならない.但し,COIの自己申告は,本学会が行う事業に関連する企業・法人組織,営利を目的とする団体に関わるものに限定する.

第2項
様式4に記載するCOI状態については,「医学研究のCOIに関する共通指針」のIV.申告すべき事項で定められたものを自己申告する.各々の開示・公開すべき事項について,自己申告が必要な金額は,第2条で規定された基準額とし,様式4にしたがい,項目ごとに金額区分を明記する.様式4は就任時の前年度1年分を記入し,その算出期間を明示する.但し,役員などは,在任中に新たなCOI状態が発生した場合には,8週以内に様式4を以て報告する義務を負うものとする.

第5条(COI自己申告書の取り扱い)

 第1項
学会発表のための抄録登録時あるいは本学会雑誌への論文投稿時に提出されるCOI自己申告書は提出の日から2年間,理事長の監督下に法人の事務所で厳重に保管されなければならない.同様に,役員の任期を終了した者,委員委嘱の撤回が確定した者に関するCOI情報の書類なども,最終の任期満了,あるいは委員の委嘱撤回の日から2年間,理事長の監督下に法人の事務所で厳重に保管されなければならない.2年間の期間を経過した者については,理事長の監督下において速やかに削除・廃棄される.但し,削除・廃棄することが適当でないと理事会が認めた場合には,必要な期間を定めて当該申告者のCOI情報の削除・廃棄を保留できるものとする.会長(次回含む),講演会会長および学術集会運営委員会委員長に関するCOI情報に関しても役員の場合と同様の扱いとする.

第2項
本学会の理事・関係役職者は,本細則にしたがい,提出された自己申告書をもとに,当該個人のCOI状態の有無・程度を判断し,本学会としてその判断にしたがったマネージメントならびに措置を講ずる場合,当該個人のCOI情報を随時利用できるものとする.しかし,利用目的に必要な限度を超えてはならず,また,上記の利用目的に照らし開示が必要とされる者以外の者に対して開示してはならない.

第3項
COI情報は,第5条第2項の場合を除き,原則として非公開とする.COI情報は,学会の活動,委員会の活動(附属の常設小委員会などの活動を含む),臨時の委員会などの活動などに関して,本学会として社会的・道義的な説明責任を果たすために必要があるときは,理事会の協議を経て,必要な範囲で本学会の内外に開示もしくは公表することができる.但し,当該問題を取り扱う特定の理事に委嘱して,利益相反委員会,倫理委員会,医療安全委員会の助言のもとにその決定をさせることを妨げない.この場合,開示もしくは公開されるCOI情報の当事者は,理事会もしくは決定を委嘱された理事に対して意見を述べることができる.但し,開示もしくは公表について緊急性があって意見を聞く余裕がないときは,その限りではない.

第4項
非会員から特定の会員を指名しての開示請求(法的請求も含めて)があった場合,妥当と思われる理由があれば,理事長からの諮問を受けてCOI委員会が個人情報の保護のもとに適切に対応する.しかし,COI委員会で対応できないと判断された場合には,理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1 名以上により構成されるCOI調査委員会を設置して諮問する.COI調査委員会は開示請求書を受領してから30日以内に委員会を開催して可及的すみやかにその答申を行う.

第6条(利益相反委員会)

 理事長の指名により、委員長と本学会会員を中心とした利益相反(COI)委員会を構成する.COI委員会委員は知り得た会員のCOI情報についての守秘義務を負う.COI委員会は,理事会,倫理委員会,医療安全委員会と連携して,利益相反ポリシーならびに本細則に定めるところにより,会員のCOI状態が深刻な事態へと発展することを未然に防止するためのマネージメントと違反に対する対応を行う.委員にかかるCOI事項の報告ならびにCOI情報の取扱いについては,第5条の規定を準用する.

第7条(違反者に対する措置)

 第1項
本学会雑誌などで発表を行う著者ならびに本学会講演会などの発表予定者によって提出されたCOI自己申告事項について,疑義もしくは社会的・道義的問題が発生した場合,本学会として社会的説明責任を果たすために利益相反委員会が十分な調査,ヒアリングなどを行い、理事長が必要に応じて事実確認のために当該会員が所属する施設・機関の長に調査協力を依頼し,情報提供を求めた上で、適切な措置を講ずる.深刻なCOI状態があり,説明責任が果たせない場合には,理事長は,倫理委員会,医療安全委員会に諮問し,その答申をもとに理事会で審議のうえ,当該発表予定者の学会発表や論文発表の差止めなどの措置を講じることができる.既に発表された後に疑義などの問題が発生した場合には,理事長は事実関係を調査し,違反があれば掲載論文の撤回などの措置を講じ,違反の内容が本学会の社会的信頼性を著しく損なう場合には,本学会の定款にしたがい,会員資格などに対する措置を講ずる.

第2項
本学会の役員,各種委員会委員長,COI自己申告が課せられている委員およびそれらの候補者について,就任前あるいは就任後に申告されたCOI事項に問題があると指摘された場合には,利益相反委員会委員長は文書をもって理事長に報告し,理事長は速やかに理事会を開催し,理事会として当該指摘を承認するか否かを議決しなければならない.当該指摘が承認された時,役員および役員候補者にあっては退任し,また,その他の委員に対しては,当該委員および委員候補者と協議のうえ委嘱を撤回することができる.

第8条(不服申し立て)

 第1項:不服申し立て請求
第7条1項により,本学会事業での発表(学会機関誌,学術講演会など)に対して違反措置の決定通知を受けた者ならびに,第7条2項により役員の退任あるいは委員委嘱の撤回を受けた候補者は,当該結果に不服があるときは,理事会議決の結果の通知を受けた日から7 日以内に,理事長宛ての不服申し立て審査請求書を学会事務局に提出することにより,審査請求をすることができる.審査請求書には,委員長が文書で示した撤回の理由に対する具体的な反論・反対意見を簡潔に記載するものとする.その場合,委員長に開示した情報に加えて異議理由の根拠となる関連情報を文書で示すことができる.

第2項:不服申し立て審査手続

  1. 不服申し立ての審査請求を受けた場合,理事長は速やかに不服申し立て審査委員会(以下,審査委員会という)を設置しなければならない.審査委員会は理事長が指名する本学会会員若干名および外部委員1名以上により構成され,委員長は委員の互選により選出する.利益相反委員会委員は審査委員会委員を兼ねることはできない.審査委員会は審査請求書を受領してから30日以内に委員会を開催してその審査を行う.
  2. 審査委員会は,当該不服申し立てにかかる倫理委員会委員長,医療安全委員会委員長ならびに不服申し立て者から必要がある時は意見を聴取することができる.
  3. 審査委員会は,特別の事情がない限り,審査に関する第1 回の委員会開催日から1ヶ月以内に不服申し立てに対する答申書をまとめ,理事長に提出する.
  4. 審査委員会の決定を持って最終とする.

第9条(細則の変更)

 本細則は,社会的要因や産学連携に関する法令の改変などから,個々の事例によって一部に変更が必要となることが予想される.総務担当理事、利益相反委員会で審議を行い,理事会の決議を経て,変更することができる.

附 則

第1条(施行期日)

本細則は,2014年7月6日(年次講演会終了翌日)から2 年間を試行期間(発表、雑誌、役員等のCOI登録期間を含む:2015年7月まで1年、2016年7月まで2年)とし,その後に完全実施とする.

第2条(本細則の改正)

本細則は,社会的要因や産学連携に関する法令の改正,整備ならびに医療および臨床研究をめぐる諸条件の変化に適合させるために,原則として,数年ごとに見直しを行うこととする.

  1. 本細則は,2016年7月(年次講演会終了まで)に改訂し,2016年7月(年次講演会終了翌日)より施行する.
  2. 本細則は2017年12月に改訂する.

第3条(役員などへの適用に関する特則)

本細則施行のときに既に本学会役員などに就任している者については,本細則を準用して速やかに所要の報告などを行わせるものとする.

申告書類

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利益相反に関する Q&A

質問リスト

Q1
医学研究における利益相反(COI)とは何ですか。
Q2
医学研究を行う上でCOIの観点から研究者が遵守すべきこととは何ですか。
Q3
COIの申告とは何ですか。
Q4
COI状態になるのを避けるために、企業からの資金提供を断るべきなのでしょうか。
Q5
営利企業や団体などから示された基準を超えるCOI状態があった場合でも学会での発表は可能ですか。
Q6
利益相反委員会とはどのような委員会でしょうか。
Q7
利益相反に関するCOI委員会と倫理委員会の役割の違いは何でしょうか。
Q8
自分の勤務する病院に研究担当者名が私となっている奨学寄附金があり、製薬会社からの100万円を超える入金があります。実際には、病院全体の研究費として多くの人が使用しており、物品を購入する場合は、病院事務を通して経理がされています。このような奨学寄附金も私のCOI状態として申告すべきでしょうか。
Q9
臨床試験に伴う治験費の契約者が病院長ですが、この場合も申請の対象に含めますか。
Q10
臨床試験に伴う治験費や受託研究費には事務費や光熱費等が含まれており、研究者自身が使用するのは一部になります。このような場合は、対象となる金額はどのように記載すべきでしょうか。
Q11
小児循環器学会総会・学術集会において演題発表する場合のCOI申告はどうするのですか。
Q12
小児循環器学会雑誌において論文発表する場合のCOI申告はどうするのですか。
Q13
小児循環器学会の役員のCOI管理はどうなっているのですか。
Q14
企業からCTの機械を無償で貸与されていますが、申告する必要はありますか。
Q15
学会役員のCOI自己申告において、医療法人が経営する病院の院長の場合は、企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職としての給与報酬が発生します。医療法人が営利を目的とした団体と考えると、COI申告の必要がありますか。
Q16
製薬会社等の企業でなく、検査・教育セミナーを開催している企業からの収入が規定を超える場合は役員としてのCOIの自己申告の必要はありますか。
Q17
ある財団から自己申告額基準に満たない金額の助成を受けています。発表の際にその財団からのからの助成研究であることをスライドに示したいと考えています。その際のCOIのスライドとしては「COIなし」として示して良いでしょうか?

Q&A ※2018年12月1日時点※

(本Q&Aは日本医学会、日本内科学会、日本消化器学会のQ&Aを参考にしています。)

 

Q1
医学研究における利益相反(COI)とは何ですか。
A
医学研究者のある行為が一方の利益になると同時に、他方の不利益になる行為のことを利益相反(Conflict of Interest, COI)といい、このような行為が起こりうる状態のことを COI状態といいます。
医学研究者がある製薬企業から多額の研究資金を得ていることはCOI状態にあると言えます。研究者がその企業の薬剤にとって都合の良い研究成果を捏造して発表するという不適切なCOI行為を行ったとすると、それは企業の利益となる一方で、その薬剤を使用した患者や処方する医師にとっては不利益となります。捏造がなかった場合でも、特別なバイアスが成果に影響を与える可能性もあります。
研究成果に不要な疑いを受けないためにも、適切なCOI管理が重要です。

 

Q2
医学研究を行う上でCOIの観点から研究者が遵守すべきこととは何ですか。
A
医学研究に携わる研究者としての義務と医療専門家である医師としての義務が同一研究者に課せられますが、これら二つの義務の対立が現実化した場合、医療専門職にある研究者は、対象である被験者の人権擁護者としての立場を最優先し、被験者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられています。したがって、資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために、研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めるようなことは、絶対あってはならない、社会的にも許されない行為と言えます。

 

Q3
COIの申告とは何ですか。
A
研究者が学会や学術雑誌へ研究成果を発表する場合に、COIの自己申告書の開示が義務付けられています。COI状態が研究成果に影響しないことが確認されることにより、正しい研究成果の評価が可能になります。適切なCOI申告・開示がなされることで、研究費の透明性が確保され、発表された研究成果の信頼性は高くなります。逆にCOI申告をせずに後日利益提供などが発覚した場合には、敢えてCOI状態を隠した理由を勘ぐられることとなり、研究成果の信頼性を問われることとなります。当然、研究者の資質も問われることになります。
理事、監事、各支部の支部長、総会・支部学術大会の会長、各種委員会の委員長、学会職員などの役員が学会運営における職責を全うするためにもCOIの自己申告書の開示が義務付けられています。学会業務の透明性等を確保することが重要と考えられます。

 

Q4
COI状態になるのを避けるために、企業からの資金提供を断るべきなのでしょうか
A
重要なのは、研究者が資金提供を受けたことを、所属する施設や学会などが正確に把握し、必要な場合に社会に開示するという透明性の確保です。企業からの資金提供を受けて医学研究を行うこと自体には問題はありません。適切なCOI管理のもとで研究を進めていく必要があり、不適切なCOI管理、不適切なCOI行為を行わないことが重要です。

 

Q5
営利企業や団体などから示された基準を超えるCOI状態があった場合でも学会での発表は可能ですか。
A
高額の個人収入を得ていても発表を行うことは可能です。発表にあたり適切にCOI状態を自ら開示することによって透明性を確保し、その講演内容の評価を参加している聴衆に判断してもらうこととなります。あくまでも適切なCOIマネージメントが重要であり、COI状態にあることが悪いことなのではありません。

 

Q6
利益相反委員会とはどのような委員会でしょうか。
A
利益相反委員会は理事会並びに他の委員会とは独立した組織であり、理事長の諮問により、第三者的な立場で対応し、深刻なCOI状態と判断された場合に適切に管理するための対応を行う役割を担います。委員会は、委員長、委員(外部含)若干名から構成されます。学会事務局からは、事務管理責任者が加わり、審査の仕分けや事務的な補助を行います。COI状態の審査が必要な場合には、匿名化した内容を利益相反委員会で審議します。

 

Q7
利益相反に関する利益相反委員会と倫理委員会の役割の違いは何でしょうか。
A
利益相反委員会は会員や役員などから提出されたCOI自己申告書をもとに、不適切な COI行為が起きないように管理・指導する役目を担っています。また COI状態に疑義が発生した場合に対応することも重要な役割です。一方、倫理委員会は、COI指針を遵守せず、社会的に本学会への損失を与えるような事態が発生した場合に違反者への措置を検討し、理事長に答申する役割を担います。

 

Q8
自分の勤務する病院に研究担当者名が私となっている奨学寄附金があり、製薬会社からの100万円を超える入金があります。実際には、病院全体の研究費として多くの人が使用しており、物品を購入する場合は、病院事務を通して経理がされています。このような奨学寄附金も私のCOI状態として申告すべきでしょうか。
A
奨学寄附金を受け入れた場合、1企業から年間100万円以上であれば、受け入れた研究代表者名(大学の場合は講座の教授など)で申告する必要があります。実際の研究費の使用者が誰であるかに関わらず、研究代表者(研究責任者)のCOIとして申告します。ただし、学会発表、論文投稿の研究内容が、奨学寄附金を納入した企業・団体と関係のない場合には開示する必要はありません。一方、学会役員などは本学会が行う事業に関連する企業・団体に関わるもの全てが自己申告の対象となり、COI状態の開示を求められます。

 

Q9
臨床試験に伴う治験費の契約者が病院長ですが、この場合も申請の対象に含めますか。
A
治験費の契約者が当該研究とは無関係の病院長であり、費用が病院に支払われることが契約書等に明記されてあれば申告の必要はありません。

 

Q10
臨床試験に伴う治験費や受託研究費には事務費や光熱費等が含まれており、研究者自身が使用するのは一部になります。このような場合は、対象となる金額はどのように記載すべきでしょうか。
A
治験費のうち記載する金額は実際に研究者に支払われた金額であり、諸経費などは含みません。明細をもとに研究代表者(部門)に治験協力費として支払われた金額のみを記載します。その他の臨床研究費についても事務費、光熱費などを差し引いた実際の金額を計算できるならそれを記載してください。しかし、不可能な場合は合計の金額を記載してください。

 

Q11
小児循環器学会総会・学術集会において演題発表する場合のCOI申告はどうするのですか。
A
COI申告は発表内容に関連する共同発表者全員のCOIを発表者が代表して申告します。演題登録をする際に登録画面上で「発表者全員」の利益相反を、発表者が代表して申告をしなくては登録できません。利益相反がある場合は学会ホームページから利益相反申告書様式をダウンロードして記入し、運営事務局までPDFの形で送っていただきます。COIの自己申告書は学会事務局で2年間保管されます。演題発表時にはCOIの自己申告を明示した後に発表します。

 

Q12
小児循環器学会雑誌において論文発表する場合のCOI申告はどうするのですか。
A
投稿にはCOIの申告が必要です。共著者全員の報告する内容に関連するCOIの申告が必要となります。このCOIの記載内容は論文末尾にAcknowledgmentsまたはReferencesの前に掲載します。規定されたCOI状態がない場合は、その旨を同部分に記載します.

 

Q13
小児循環器学会の役員のCOI管理はどうなっているのですか。
A
本学会が行う事業に関連する企業・法人組織、営利を目的とする団体に関わる活動に関連するCOIの申告を行います。申告書は封書で学会事務局へ届けられ、厳重に保管されます。申告書は学会本部で2年間保管され、その後は破棄されます。

 

Q14
企業からCTの機械を無償で貸与されていますが、申告する必要はありますか。
A
CTという高額の機械の提供ですので、申告すべきです。申告すること自体が悪いことなのではなく、何か疑義が生じた時に問題はない、と胸を張って言える状況を作っておくということが大切です。「抄録の内容が資金援助によって影響・干渉を受けていない」ということを明確にするためにもCOIの申告をする必要があります。また、発表時にも明示した後に発表します。

 

Q15
学会役員のCOI自己申告において、医療法人が経営する病院の院長の場合は、企業や営利を目的とした団体の役員、顧問職としての給与報酬が発生します。医療法人が営利を目的とした団体と考えると、COI申告の必要がありますか。
A
医学研究に関係を持つ企業、組織、団体は以下のように定義されますので、医療法人の場合は該当しないものと判断されます。従ってCOIの申告の必要はありません。
「医学研究の利益相反に関する共通指針」の細則(日本小児循環器学会)
第一条 第2項
「医学研究に関連する企業・法人組織,営利を目的とする団体」とは,医学研究に関し次のような関係をもった企業・組織や団体とする.
①医学研究を依頼し,または,共同で行った関係(有償無償を問わない)
②医学研究において評価される療法・薬剤,機器などに関連して特許権などの権利を共有している関係
③医学研究において使用される薬剤・機材などを無償もしくは特に有利な価格で提供している関係
④医学研究について研究助成・寄付などをしている関係
⑤医学研究において未承認の医薬品や医療器機などを提供している関係
⑥寄付講座などのスポンサーとなっている関係

 

Q16
製薬会社等の企業でなく、検査・教育セミナーを開催している企業からの収入が規定を超える場合は役員としてのCOIの自己申告の必要はありますか。
A
COIの自己申告は基本的に医学研究に関連する企業、法人団体との関与について行います。検査・教育のセミナーが理事等の活動に影響をもたらす可能性は低い場合もありますが、伏せるよりも、講演料の規定に沿って敢えて申告しておく方が透明化の観点からよいと考えられます。COI状態自体が悪いことなのではなく、何か疑義が生じた時に問題はないと胸を張って言える状況を作っておくということが大切です。

 

Q17
ある財団から自己申告額基準に満たない金額の助成を受けています。発表の際にその財団からのからの助成研究であることをスライドに示したいと考えています。その際のCOIのスライドとしては「COIなし」として示して良いでしょうか?
A
基準未満なので「開示すべきCOIはない」として問題はありません。その当財団からの助成研究であることを明示することは、その財団にとって助成事業の成果の一環を示す意味でも良いことなので、COI開示の一部として「基準以下ではありますが、」として示しても問題ありません。あるいは、COIとは別に謝辞として明示することでも良いものと考えます。