日本小児循環器学会理事長
小野 博
(2025年8月1日)

 このたび8月より日本小児循環器学会理事長を拝命いたしました、国立成育医療研究センターの小野博です。
 日本小児循環器学会は、1965年に開催された小児循環器研究会総会を前身とし、今年で60年の節目を迎えました。日本医学会連合にも加盟し、小児医療に関わる学術団体の一員として、常に先頭に立って活動を続けてまいりました。
 本学会は「私たちは、先天性疾患を中心とする小児期発症の心臓病の医療・研究と、⼩児期からの生活習慣病予防を通じて心臓病を克服し、世界中の人々の健康と福祉を推進します」という理念を掲げています。その実現に向け、「医療」「研究」「教育」「社会貢献」の4つを柱に活動を展開してきました。近年は前理事長・山岸敬幸先生のもと「Academic for Social」をテーマに掲げ、医療・研究と並んで社会貢献を重視した取り組みを進めております。
さて、現在の小児を取り巻く環境は大きな変化の途上にあります。2024年度の出生数は68.6万人と初めて70万人を下回り、合計特殊出生率も1.15と、少子化の深刻さが浮き彫りとなりました。2023年にはこども家庭庁が設立されましたが、現時点では少子化に対する政策の効果は限定的です。このような状況下で、本学会がどのように社会に貢献できるかは大きな課題です。
 また、学術団体としての使命も極めて重要です。文部科学省の「科学技術・イノベーション白書」では、我が国の研究力低下が指摘されています。本学会では、研究支援や産官学連携を推進するとともに、1985年創刊の和文誌「日本小児循環器学会雑誌」に加え、2017年には英文誌「Journal of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery」を発刊いたしました。しかし、投稿数は依然として十分とは言えません。会員の皆さまはもとより、広く関連分野の先生方からの積極的なご投稿を心よりお待ちしております。
 さらに、本学会は国際化とデジタル化を重要な課題として取り組んでまいりました。米国心臓協会、欧州小児循環器学会をはじめとする国際的な学会との交流を深め、今後はアジア諸国との連携も一層推進いたします。また、医療DX推進ワーキンググループを中心に、学校心電図検診のデジタル化をはじめとした取り組みを具体化し、さらなる発展を目指してまいります。
 本学会は、小児循環器医、心臓血管外科医、循環器内科医、産科医に加え、看護師、臨床工学技士、理学療法士など、多職種の会員に支えられています。これらの幅広い専門家の協力なくして学会運営は成り立ちません。今後も裾野を広げつつ、学会全体の厚みを増し、透明性と風通しの良さを大切にしながら、若手からベテランまで多様な意見を積極的に取り入れてまいります。
 学会の理念を実現するため、会員の皆さまとともに全力で取り組む所存です。今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。